2009年9月24日木曜日

mainichi shasetsu 20090924

社説:気候変動サミット 意思表明を具体策に

 国連気候変動サミットは、温暖化問題の交渉の場ではない。交渉の山場は、年末にコペンハーゲンで開かれる「気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)」である。

 とはいえ、各国の首脳が集い、自国の決意を表明することで、国際交渉に弾みをつける役割は大きい。

 ニューヨークの気候変動サミットでの演説で、鳩山由紀夫首相は「鳩山イニシアチブ」を公表した。すでに明言していた通り、温室効果ガスを「2020年までに90年比で25%削減する」と表明し、日本の決意を示した。

 国内排出量取引制度など国内政策に加え、途上国支援についても「これまでと同等以上の資金的、技術的支援を行う用意がある」と述べた。

 これまで、自民党政権下の温暖化政策は、国内の意見調整に重点を置く非常に内向きなものだった。麻生太郎前首相が表明した「05年比で15%削 減」という中期目標も、産業界と環境保護派の双方に配慮した、ビジョンの見えない中途半端なものだった。その結果、国際的な政治・外交の場では存在感がな かった。

 それに比べ、鳩山首相の意思表明は国際的に存在感を示したといえるだろう。政権交代を印象づける効果は、ねらい通りだったはずだ。

 ただし、これで国際交渉に明るい見通しが出てきたと思うのは、楽観的に過ぎる。日本の目標とても「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意」を前提としたもので、他国の出方に左右される。

 今回のサミットで米国のオバマ大統領は、再生可能エネルギー推進などへの決意を表明した。しかし、具体的な目標には触れず、国際的にどういう責任を果たす用意があるかは見えなかった。自国の対応の遅さを認めつつ、新興国の排出削減努力も強く求めている。

 米国と並ぶ最大排出国である中国の胡錦濤国家主席は「20年までに全エネルギーの15%を化石燃料以外で賄う」「GDP当たりの二酸化炭素排出量 を2020年までに05年レベルよりかなり減らす」といった、従来より前向きな目標を示した。ただし、その前提として、先進国のさらなる資金援助の必要性 も強調している。

 結局のところ、いずれの国も「他の国が責任を果たすなら」という条件付きで、自国の取り組みを表明しているのが実情だ。

 もちろん、気候の安定化には「全員参加」が不可欠だ。それには、他国に条件を求めるだけでなく、互いの溝を埋める努力が欠かせない。

 COP15まで、あと2カ月余り。各国の首脳はサミットでの発言を具体化に結びつけるべく、政治的リーダーシップを発揮してほしい。

毎日新聞 2009年9月24日 0時07分



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