2009年9月21日月曜日

mainichi shasetsu 20090920

社説:東欧MDと核 果敢な「オバマ軍縮」を

 米露間の火種になっていた東欧ミサイル防衛(MD)計画についてオバマ米大統領が大胆な見直しを発表した。米露協調による核軍縮路線の一環だろ う。オバマ大統領は24日の国連安保理首脳級会合で議長を務め、「核兵器なき世界」への新たな取り組みを打ち出すことも予想される。「オバマ軍縮」の成果 に引き続き期待したい。

 東欧MDは米国のブッシュ前政権が推進した構想だ。かつてはソ連陣営だったポーランドとチェコに迎撃基地やレーダー施設などを設け、主にイランの ミサイルを撃墜しようというのだ。ブッシュ政権はポーランド、チェコと設置協定に調印し、北大西洋条約機構(NATO)も東欧MD計画を承認した。

 現行計画の事実上の中止を喜ばない国もあるが、まずはオバマ政権の決断を評価したい。この計画については、迎撃の技術的可能性とは別に、果たして イランから欧州へのミサイル攻撃を想定すべきなのか、という根本的な疑問があった。米・イスラエルにはイランへの警戒感が強いが、欧州には対イラン関係が 良好な国も多いのである。

 他方、ロシアは東欧MDについてロシアのミサイルを想定したものだと反発し、NATOとの軍事バランスに関係する欧州通常戦力(CFE)条約の履 行停止を表明した。米露の核軍縮でも東欧MDが波乱要因になってきた。必要性と効果が定かでない東欧MDが米露の緊張をもたらすのは理解に苦しむことであ る。

 今回、オバマ政権は東欧MDの迎撃対象を長距離ミサイルから中短距離ミサイルに変更するなど、ロシアを敵視しない姿勢を強調した。米露協調でイランに対処しようというのだろうが、この際、米国に考えてほしいのは、真の脅威はどこにあるか、という問題である。

 イランが核兵器を開発しているかどうか、必ずしも定かではない。核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮の方が重大かつ現実的な脅威であるのは明らかだ。ブッシュ政権がイラク戦争などに力を使い果たし、北朝鮮の核兵器開発を防げなかったことを教訓とすべきである。

 オバマ大統領は24日の会合で、兵器管理と核軍縮、国際的不拡散体制の強化などを主要議題にするという。特定の国の核問題は論じない方針だが、世界の核兵器の9割を持つ米露が核軍縮を進めるとともに、北朝鮮などが核兵器を廃棄しなければ、世界は決して安全にならない。

 日本から出席予定の鳩山由紀夫首相は、新たな核の脅威にさらされる唯一の被爆国・日本の窮状と「核なき世界」へのビジョンを、国際社会に明確に発信してほしい。

毎日新聞 2009年9月20日 0時11分



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