2009年9月28日月曜日

mainichi shasetsu 20090928

社説:鳩山外交 「変化」の発信は成果だ

 米国での一連の首脳外交で鳩山由紀夫首相が発信した日本外交の新機軸は実現への道筋が具体的に描けているわけではない。しかし、政権交代による日本の「変化」を国際社会に強く印象づけたことは「鳩山外交」の成果と言えるだろう。

 帰国を前にした記者会見で首相が「世界に日本の変化を実感していただくきっかけになったのではないか」と語ったように、各国の注目を最も集めたの は、20年までに1990年比25%の温室効果ガスを削減するとした国連気候変動サミットでの発言だろう。潘基文(バン・ギムン)国連事務総長は「首相の 指導力によるもので加盟国から大変好意的に受け止められている」と評価し、オバマ米大統領も日米首脳会談で首相の「勇気」を称賛したという。

 国際的には高い評価を受けたが、25%削減の目標設定には産業界などに慎重論がある。首相は国民合意の形成へ重い宿題を背負った。

 核に関する国連安保理首脳会合での非核三原則堅持発言も政権交代があったればこそだろう。近隣の国が核開発を進めるたびに日本の核保有を疑う声が 出るのはなぜか−−。自らこう問いかけ、「それは被爆国としての責任を果たすため核を持たないのだという我々の強い意志を知らないが故の話だ」と言い切っ た。自民党政権の首相からは聞けなかった発言だ。

 国連総会演説では祖父の鳩山一郎元首相が唱え自身も政治理念に掲げる「友愛思想」を紹介し、「世界の懸け橋になるべく全力を尽くす」と訴えた。さらに、「国連安保理常任理事国入りを目指す」とも明言しアピールも忘れなかった。

 日中首脳会談で提案した東アジア共同体構想については国連総会演説でも言及し、「ローマは一日にして成らず。ゆっくりでも着実に進めていこう」と 呼びかけた。この構想には、米国の位置付けや日米基軸との関係など難しい問題もある。「開かれた地域主義」の原則を踏まえ、あせらずに取り組む必要があ る。

 ロシアのメドベージェフ大統領との会談では、懸案の北方領土問題解決に向けた平和条約交渉を促進するため外相レベルの定期協議を開始することで合 意した。領土交渉を動かすのは容易ではないが、停滞していた領土交渉に対するロシア側の姿勢の微妙な変化をうかがわせる。これも政権交代の効果といえるか もしれない。

 一連の発信で首相の意気込みは各国首脳に伝わったことだろう。問題は発した言葉をどう実行に移すかであり、国際社会もそれを注視している。今後は現実政治の中で、連立政権トップとしての調整力と指導力が問われることになる。

毎日新聞 2009年9月28日 0時13分




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