社説:新政権に望む 生活第一の道筋を示せ
過去最悪の完全失業率、止まらない現金給与の減少、デフレの到来を思わせる物価の下落。
民主党を中心とした政権はこうした厳しい経済環境の中で発足する。民主党は自公政権の失敗を教訓に、「暮らしのための政治を」ということで、生活重視のマニフェストを国民に示してきた。国民の期待の大きさもあり、最初から手腕を問われることになる。
今の日本経済の困難は大幅な需要不足に象徴されている。輸出の急減も大きな要因だが、国内的には家計にかかわる雇用や所得に改善の兆しの見えないことが重くのしかかっているのだ。
マクロでみれば4〜6月期の実質成長率が年率換算した前期比で3.7%と5四半期ぶりにプラス成長に戻り、鉱工業生産も7月まで5カ月連続で上昇 している。しかし、水準そのものはまだ低い。国民生活に安心をもたらすものではない。しかも、企業が元気になれば家計も潤うという、80年代末のバブル経 済期までのパターンはすっかり崩れている。供給側に着目した成長戦略では活路を見いだせない。
政権交代はこうした経済政策の転換への期待でもある。
家計の状況は民主党がマニフェストを策定した時より厳しくなっている。何をおいても、広い意味での雇用対策を早手回しに講ずる必要があるのだ。
需要不足対策で最も有効なのは失業を減らすこと、言い換えれば、仕事を作ることなのだ。雇用創出も公共事業に限らない。民間の努力も求められる。 能力のある労働力が余剰状態にあることは社会的に非効率である。働きたい人が働けることになれば効率は上がるうえ、消費も増える。民主党は政権を取った以 上、このような視点から有効な政策策定に汗をかかなければならない。
新政権は、09年度補正予算を全面的に見直すと同時に、自公政権下で進められてきた10年度予算編成を白紙からやり直す。09年度補正に盛り込ま れている各種基金の洗い直しは当然のことだ。国立メディア芸術総合センターの建設凍結も国民の納得が得られるだろう。予算は政権の政策意思そのものだ。編 成手法も10年度からは、国民生活のニーズに基づいた優先順位による案件採択を明確にすべきだ。一律削減が基本の概算要求基準は、役割が終わっている。
必要な施策実現に向け、財源確保も軽視してはならない。税制の所得再配分機能が低下していることは間違いない。国民負担、企業負担を含め、新税調では広く議論すべきだ。それが、国民の安心を支える。
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