2009年9月2日水曜日

mainichi shasetsu 20090902

社説:新政権に望む 率直で明快な発信を

 国と国の約束事を自国の都合だけでほごにしては国際社会での信用にかかわる。外交・安全保障政策には継続性が大事だ。

 だが、そのことを重視するあまり新機軸を打ち出すことに慎重になりすぎては歴史的な政権交代を果たした意味が薄れる。米国の一極体制が過去のものとなり世界の平和と安全は多国間の協調と連携なしには追求しがたい。日本外交にとっても政策選択の幅を広げる好機である。

 国政を担うことになる鳩山由紀夫・民主党代表には、国際政治の現実を踏まえながらも従来の枠にとらわれない大きな外交戦略を描き、率直で明快なメッセージを発信することを望む。

 鳩山氏は社民党などとの連立協議を整え新内閣を発足させれば、さっそく外交力が試される場面を迎える。今月下旬の訪米の際、ニューヨークでの国連 総会演説やピッツバーグでの主要20カ国・地域(G20)金融サミットなどに合わせオバマ大統領との初の日米首脳会談が行われる方向だ。「緊密で対等な日 米関係」を掲げる鳩山氏にとっては大事な会談となる。

 対米交渉の課題としては、在日米軍基地のあり方見直しや日米地位協定の改定、自衛隊によるインド洋での給油活動に代わる対テロ貢献策、核持ち込み に関する日米密約の解明などがある。しかし、米側は在日米軍再編に関する日米合意の再協議には応じない考えを示しておりハードルは高い。

 ニューヨーク会談は、11月のオバマ大統領初訪日に向けてこうした課題に協調して対処できる信頼関係の土台づくりができるかどうかの試金石となるだろう。

 そうした折、気になることが起きている。米ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)などに掲載された鳩山氏の論文が米主導の市場原理主義や基軸通貨としてのドルに疑問を呈し、東アジア共同体の創設を目指すことを主張していることが米国内で波紋を広げているという。

 鳩山氏は「決して反米的な考え方を示したものではない。論文全体を読んでいただければわかると思う」と説明している。鳩山氏の真意が日米関係を基 盤としたうえで東アジアでの平和的な共同体を構想することにあるというのなら、今後の発信には誤解を招かないよう配意する必要がある。

 新政権は北朝鮮による核・ミサイル・拉致、ロシアとの北方領土問題、中国・韓国との首脳対話強化など自民党政権下での外交が積み残した課題にも取り組まなければならない。総選挙で得た国民の支持を強力な外交の展開に生かしてほしい。

毎日新聞 2009年9月2日 0時19分




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