2009年9月15日火曜日

mainichi hito

ひと:豊田三郎さん まもなく101歳 現役の画家

 「世界一の美の宝庫」とたたえる古里、福井市(旧美山町)の山村風景を描き続け、18日に101回目の誕生日を迎える。「描きたいことが山ほどある。とてもじゃないけど時間が足りない」と、情熱は衰えをしらない。

 杉林を表現する美しい緑色は「トヨダグリーン」と呼ばれ、内外から高い評価を受ける。81歳で「ふるさとの山河」がフランスのサロン・ド・パリ展で大賞を受け、各国の展覧会でも受賞を重ねた。

 80歳までは無名だった。農林業を営む家に生まれ、厳しい父の下で野良仕事に明け暮れる毎日を過ごした。大好きな絵の道を捨てられず、25歳で家 を飛び出し、東京の帝国美術学校(現武蔵野美術大)に入学。父には勘当されたが、「故郷は忘れられなかった」。終戦を機に美山に戻り、中学校の美術教師に 就いた。父は既に亡くなっていた。

 古里の風景で、父と植えた思い出のある杉は「面影が重なるから」と、特にこだわる。74歳で妻を亡くし、「もう絵を描くことしかない」と画業に没頭した。

 展覧会出品や講演活動で今も多忙な日々を過ごしている。今年6月には愛用する絵の具のメーカーが「トヨダグリーン」と名付けた油絵の具を発売した。「ノーベル賞をもらったような気分」と相好を崩す。

 「どこまで生きられるか分からんけど、もう少し性根を入れて杉を描く」【安藤大介】

 【略歴】とよだ・さぶろう 福井市東河原町在住。随筆を執筆するほか、短歌もたしなみ昨年、初の歌集を出版した。100歳。

毎日新聞 2009年9月15日 0時02分




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