2009年09月15日
『読者はどこにいるのか——書物の中の私たち』石原千秋(河出書房新社)
今回の創刊に際して、勝手ながら、ひとり「河出ブックス」だけでなく、〈選書〉という器全体が盛り上がってほしいという願いを持っております。そこで、各著者に「この〈選書〉がすごい!」という推薦の〈選書〉を挙げていただくことにしました。こちらもお楽しみください。
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まずは、石原千秋さんの『読者はどこにいるのか——書物の中の私たち』です。
石原さんは、早稲田大学教育・総合科学学術院教授。専攻は日本近代文学。夏目漱石から村上春樹まで、小説の斬新な読解に定評があり、受験国語に関する著書も多数お持ちです。
今回の本は、石原さんの作品読解の肝である「読者論」のエッセンスをギュッと凝縮していただきました。一方では生身の人間でありながら、一方では作品テクスト内の一機能である「読者」。その奥深き世界に読者をいざなってくれます。
石原さんから読者のみなさんへのメッセージです。
「いま、私たち大衆にとっては黙読が自然な本の読み方ですが、そういう私たちは書物の中でどのように振る舞っているのか、あるいは振る舞えばいいの か。ふだんはあまり意識しない読者の振る舞いについて、なぜ「読者」がテーマとなったのかというところまで遡って書いてみました。」
目次(章タイトル)は以下のとおりです。
はじめに
第一章 読者がいない読書
第二章 なぜ読者が問題となったのか
第三章 近代読者の誕生
第四章 リアリズム小説と読者
第五章 読者にできる仕事
第六章 語り手という代理人
第七章 性別のある読者
第八章 近代文学は終わらない
おわりに
どうぞご期待ください!
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石原千秋の、「この〈選書〉がすごい!」
�江藤淳『漱石とその時代 第一部・第二部』新潮選書、1970年
作品論全盛の時代に、時代の中に漱石を位置づける試みは画期的でした。これを超える「時代の中の漱石」は、私のライフワークとして遠くにあります。
�小島毅『近代日本の陽明学』講談社選書メチエ、2006年
ちょっとした雑書にも「生存競争」という言葉が出てくるように、近代日本は強烈な社会進化論パラダイムの中で成立しましたが、水戸学派の陽明学も近代成立に深く関わっていたというのです。虚をつかれたような本でした。
�菅野仁『ジンメル・つながりの哲学』NHKブックス、2003年
「社会学の基礎を築いたジンメル」を手がかりに、「ほんとうの私」について考えたり、「秘密」「闘争」「貨幣」というジンメル社会学のキーワードから現代的課題を考察したりしています。良質の社会学入門です。
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