2009年9月19日土曜日

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思想をもっと「つまる」ものに 批評家・佐々木敦さん

2009年9月17日

写真佐々木敦(ささき・あつし)さん(45)

 80年代からゼロ年代まで、この30年の思想地図の変容を追った近著『ニッポンの思想』(講談社現代新書)が好調だ。

 現代に連なる転換点、とみるニューアカ現象。たどり着いた先は、市場主義が強まり、有力な論客の数も先細りになって、「つまらない」風景が広がる——。

 「一読者として、思想をもっと『つまる』ようにしたい。そう思ったことが、深いところでは、執筆の動機でした」

 思想の本は初めてながら、フリーの物書きとして、20年以上のキャリアをもつ。アート系の映画館に勤めたあと、映画・音楽・小説の順に仕事の重心を移し、『絶対安全文芸批評』(INFASパブリケーションズ)など10冊を超す著書を発表してきた。

 多彩な領域での活動は、ジャンル横断というより、テーマが「通底」し「貫通」した結果だそう。業界の外側に立って、世間に知られていないマイナーな作品を発見する。マージナル(周縁的)でとっぴな表現を取り上げていく。

 一方で、他人より知っていることでプライドを満たしているかのようなマニアは嫌いだ、とも。

 「その問題のことを知らない人に向けて書く。それは意識的にやってきたつもりです」

 批評とは何か。どうあるべきなのか。「オレ様節」をきかせるのではなく、逆に客観性に徹しようとするのでもなく、その間で、軸足をどこに据えるか。自らのスタンスの模索を続けつつ、批評家講座を主宰し、大学でも教える。

 次の時代、いわく「10(テン)年代」の批評のゆくえは?

 「作家論、作品論に回帰していくんじゃないですか。構造の分析は限界にきている。頭のいい人ならだれでも言える『正解』じゃないところで、まだやれることはあると思う」(藤生京子)




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