芭蕉の手紙発見 「奧の細道」出発直前に同行者変更
江戸時代の俳人、松尾芭蕉(1644〜94)が「奥の細道」の旅に出発する2カ月ほど前に書いた手紙が新たに見つかった。旅には曽良が同行したが、当初 は別の門人が随行する予定だった。急きょ同行者が代わった状況を知る手がかりになる資料で、専門家は「大変貴重で価値が高い」と評価している。
山形市の山寺芭蕉記念館を運営する市文化振興事業団が6月、美術愛好家の所蔵物を調査してこの手紙を発見。国文学者の尾形仂氏ら3人の専門家が鑑定し、筆跡などから芭蕉の自筆と断定した。
手紙は縦22.5センチ、横50.5センチ。あて名の「金右衛門」は江戸の武士とみられる。手紙の日付は、旅に出発する2カ月ほど前の元禄 2(1689)年閏(うるう)1月20日。旅に同行する予定だった門人の路通が同月17日に突然、江戸を去って上方に向かったとつづられている。さらに、 「昨日より泪(なみだ)落としがちにて」などと、路通が去って動揺する心中を記している。
路通が去った確かな理由は書かれていないが、山形大学大学院の山本陽史教授(近世日本文学)は「路通が自分勝手に芭蕉のもとを去ったのであれば怒 るかもしれないが、芭蕉はショックを受けている。芭蕉が路通の才能を評価していたこともわかっており、路通はなんらかの事情があって消えたということなの ではないか。例えば、門人たちの間であつれきがあったのかもしれない」と推測する。
この手紙は同記念館で開かれている企画展「芭蕉・蕪村・一茶」で公開されている。16日まで。(佐藤恵子)
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