2008年11月6日木曜日

asahi shohyo 書評

コーヒー「こつ」の科学 [著]石脇智広

[掲載]2008年10月29日朝刊

■コーヒーをよりおいしく飲む指南書

  コーヒー好きにはこだわり派が多い。たとえばペーパードリップ、ネルドリップ、コーヒーメーカー、フレンチプレス、サイホンといった具合に、器具選びから はじまり、いれ方ひとつに思い入れがある。それだけ、おいしいコーヒーを飲む時間は至福の瞬間ということだろう。工学博士でもある著者もそんなコーヒー通 の一人。自称、「科学」というコンパスを片手にコーヒーの森を楽しみながらさまよう研究者である。

 本書では、コーヒーを買う店の選び方、コーヒーのいれ方、コーヒー豆の保存方法といった日常レベルの知識から、コーヒーの栽培 国や品種といった背景、焙煎(ばいせん)やブレンドなど専門的な知識にいたるまでをQ&Aスタイルでまとめている。なんといっても科学的な視点を交え、素 朴な疑問に答えている点が特徴で、おいしさの秘密や理由が一目瞭然(りょうぜん)だ。

 実は、従来「通」の間でしばしば言われてきた「深煎(い)り豆でいれたコーヒーほどカフェインが少ない」という言葉は誤解とい う。また、もっとも普及しているペーパードリップは味の安定感という点では実は難易度が高いといった意外な知識も得られる。一読すると、コーヒーという身 近な嗜好(しこう)品に、より興味がわく。まさにコーヒーを味わいつつおいしく読める指南書なのである。

0 件のコメント: