2008年11月5日水曜日

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オバマ次期政権、格差是正を重視 財政赤字が最大の障壁

2008年11月5日20時31分

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写真今年5月、米ミズーリ州の衣料品工場を訪問したオバマ上院議員=ロイター

 【ワシントン=西崎香】オバマ米次期政権は与党民主党が議会で議席を増やしたことを追い風に、経済の立て直しに急いで着手する。これまでの「小さな政 府」から「大きな政府」へかじを切り、格差是正や雇用拡大を図るとみられるが、最大の制約要因は、過去最悪の1兆ドル(約100兆円)を超しそうな財政赤 字だ。

 オバマ氏は近く、次期財務長官を選んで経済政策チームを立ち上げるとの観測がある。長官候補にはニューヨーク連邦準備銀行のガイトナー総裁やサ マーズ元財務長官らが浮上。すでに財務省は次期政権スタッフが使える部屋を用意しており、来年1月20日の政権発足を待たずに現政権と連携できるよう準備 態勢を整えている。

 オバマ氏が重視するのは格差の是正。顧問役のエコノミスト、ジェラッド・バーンスタイン氏らは「労働生産性は00年から07年まで約20%上昇し たが、勤労世代の中流家庭の実質所得は3%低下した」と指摘。ブッシュ政権時代に広がった格差を是正するため、勤労世帯向けの減税や所得補助だけでなく、 企業内で労働組合の結成を容易にする法改正などで賃上げしやすいようにする計画だ。

 失業者対策では、インフラ整備の公共事業も積極化。主要道路や橋、港湾、空港などの社会投資を増やし「最大200万人の新規雇用を実現する」(オ バマ氏)。ミネソタ州ミネアポリスの橋が崩壊して13人が死亡する事故が昨年起きるなどしており、インフラ強化への社会的な要望も強い。

 政府の役割拡大は産業界にも及びそうだ。エネルギー対策を充実し、インフラ整備とともに競争力強化を狙う。代替エネルギーの技術開発など、環境対策を兼ねた「グリーン雇用」を500万人つくるため、今後10年間で1500億ドル(約15兆円)を投資する。

政府の関与は産業界でも拡大しそうだ。エネルギー対策を充実し、インフラ整備とともに企業の競争力強化を狙う。代替エネルギーの技術開発など、環境対策を兼ねた「グリーン雇用」を500万人つくるため、今後10年間で1500億ドル(約15兆円)を投資する。

 自動車業界の救済もその一環。税負担の軽減や政府保証の融資などで40億ドル(約4千億円)を供給する計画だ。「エネルギー効率の優れた車を日本や韓国 ではなく、米国で開発して作ることが極めて重要」と主張するオバマ氏は、自動車大手各社の首脳や組合幹部と会談し、対策づくりに着手するという。

 金融問題では、今後新たに430万世帯が住宅ローンを払えず、家を失うとの予想もあり、返済負担を軽くする支援策を進める。政府による7千億ドル (約70兆円)の資本注入や不良資産の買い取り額を上積みする可能性もある。一方で金融機関への監視や規制を強め、高額報酬の一層の抑制や増税も検討され そうだ。

 ただ、一連の対策を実施しても、金融危機は長期化する可能性が強い。住宅価格の下落や低迷が来年いっぱいは続きそうだからだ。

 オバマ氏は4日の演説で呼びかけた。「道のりは長く険しい。任期中にたどり着かないかもしれないが、皆さんとともに到達することを約束する」



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