2008年11月5日水曜日

asahi biology environment Aomori Hachinohe shiomushi

網の魚、1日で骨に 八戸の「シオムシ」漁師悩ます

2008年11月3日18時4分

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写真網にかかって「シオムシ」に食べられ、骨になって揚がった魚=八戸市鮫町の大久喜漁港で

写真まるでおがくずにまぶしたようにサケに群がる「シオムシ」=八戸沖で

 「網にかかった魚が骨になって揚がってくる」。青森県八戸市沖の太平洋で、地元で「シオムシ」と呼ばれる体長数ミリの小さな生物が海の中で網にかかった 魚を食い荒らし、刺し網漁の漁師たちを悩ませている。10月30日、同市鮫町の川崎邦和さんの漁船「第10栄邦丸」に乗せてもらい、現場でその様子を見 た。

 午前5時。第10栄邦丸は、鮫町の大久喜漁港をまだ暗い海に向かって出港した。比較的穏やかな海を十数分走って、船は止まった。よく見ると赤い旗が浮いている。刺し網の目印だ。魚群探知機は水深40メートルを示していた。陸から約3キロ沖の辺りだ。

 赤い旗が引き揚げられ、網のロープが揚網機にかけられた。幅約2メートル、長さ400メートルにもなる網がぐんぐん引き揚げられていく。オコゼに 似た底魚やヒトデ、小さなカニが網に絡まっている。目的のヒラメやカレイは少ない。「ほら、こんな具合だよ」。網を手繰っていた川崎さんが何かを差し出し た。腹の骨がむき出しになったカレイだった。

 続いて体長50センチほどのサケが放り投げられた。おがくずをまぶしたように、茶色の小さな粒が一面に着いていた。よく見るとその粒は動いてい る。拡大鏡でのぞくと、体長3〜5ミリほどの丸く太った小さな「虫」だ。「これがシオムシだよ」。川崎さんが、うんざりした表情で言った。

 「網にかかって弱った魚や死んだ魚がやられる。十数年前は、3日間網を入れておいても、こんなことはなかった。最近は1日で魚を骨にしてしまう。 カレイやヒラメの3割は被害に遭っている。アンコウなんかの値がよい魚ばかりやられるよ」と川崎さん。翌朝、港で前日の網の手入れ中、骨だけの魚が絡まっ ているのも見つかった。

 「シオムシ」に詳しい、広島県廿日市市の瀬戸内海区水産研究所生産環境部の首藤宏幸部長に聞いた。

首藤さんは「実物を見ていないので何ともいえないが、弱った魚や死んだ魚に群れるのは甲殻類のヨコエビ類や等脚類、ウミボタルのうちのいずれかで す。世界中に分布し、昼間は砂の中にいて夜に活動します。2時間でヒラメを骨だけにしてしまうのを見たこともあります。生態は十分解明されていません。網 を海底から少し浮かしたり、網を出来るだけ短時間であげたりといった対策が考えられますが、効果的なものは見あたりません」と言う。

 「シオムシ」は八戸地域や北海道沿岸の呼び名で、実際のシオムシは別の甲殻類。こんな悪さはしない、という。(掛園勝二郎)



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