2008年8月6日水曜日

asahi shohyo 書評

素敵にサイエンス 研究者編 [編著]鳥養映子、横山広美

[掲載]2008年8月3日

  • [評者]耳塚寛明(お茶の水女子大学教授・教育社会学)

■ジグザグなキャリアも輝いて

 女性が科学に向かないわけはなく、まして日本女性がとくにそうだというはずもない。しかし、研究者に占める女性比率は米国24%に対して日本は11%(総務省資料)。

 この本は、女子生徒に向けて現役女性研究者たちが発信する、科学研究者の世界への招待状である。6人の女性科学研究者と4人の女性大学院生が、自らの進路選択や研究者生活を語る。

 登場する研究者たちは、皆が理数系の得意な科学少女だったわけではない。共通点を強いてあげれば、好奇心が強く、人との出会い を大切にして果断に選択し、努力を惜しまずステップアップを重ねている点か。その結果、理系学部、大学院から大学や研究所へという直線的キャリアではな く、電撃的選択に満ちた、山あり谷ありの、世界を股にかけるジグザグなキャリアが出来上がる。彼女たちのキャリアは、文字通り輝く。

 人的資源の半数を占める女性たちからそっぽを向かれては、科学技術立国構想に赤信号がともる。だから政府は、理数系離れを食い止め、また研究と出産・育児などの両立を支援するプログラムを複数走らせて躍起である。

 それも不可欠だが、ロールモデルも必要だ。中学生、高校生にぜひ触れてほしい、素敵(すてき)なモデルである。

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