2008年8月26日火曜日

asahi shohyo 書評

ここがおかしい菌の常識 [著]青木皐

[掲載]週刊朝日2008年8月29日号

  • [評者]温水ゆかり

■朗報! オナラこそ家族の絆だ

 いくら好物でも、夏はやっぱレバ刺しやめといたほうがいいのか、たむけん。と思っていたとき本書を発見。〈菌の基礎知識+啓蒙+時々おじさんギャグ〉の実利書だ。

 第2章「食中毒はなぜ起きる」によれば、我々が食品の危険度を感知する「臭気・変色・イヤな酸味」の尺度は使えない。陰気なこ の3兄弟は食中毒菌ではなく腐敗菌が原因。こやつらは熾烈な陣取り合戦をしていて、先に増えたもの勝ち。つまり人間は、腐敗菌優勢の食品は感知できても、 食中毒菌優勢の食品は判別できないと言うのだ。

 安すぎる卵(サルモネラ菌)、魚の切り身と接して貝類の殻が並んでいる鮨店(腸炎ビブリオ)などにはご用心。重なった部分に菌が残りがちな薄切り肉や、ジューシーに焼き上げるハンバーグより(O157などの大腸菌)、分厚いステーキが安全だそうだ。

 とは言え菌は悪玉ばかりではない。腸内細菌などは必須。そこでお父さんに朗報だ。家でオナラを一発。家族がクサッと叫んだ時は もうみんなの鼻から菌が侵入、同じ腸内細菌の保菌者に。子供の免疫力を鍛えることにもなる。これぞ家族の絆。著者曰く「近所づきあいより『菌所』づきあ い」。お後がよろしいようで。

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