今様な古典 「徒然草」は恋愛物語だったかも
[掲載]2008年8月10日
- [評者]中村真理子
小林多喜二の「蟹工船」が現代的な解釈で若者に読まれた。古典再読の機運は熱い。ここぞとばかりにすらすらと読めて楽しい現代風の古典が続く。
まずは千年紀の源氏物語から。『源氏物語入門』が易しい。夕顔の命が物の気(け)に奪われる、光源氏が幼い紫の上をかいま見る などの名場面をさらりと読ませる。絵巻の解説はイラストに丸数字が入っていて、位置関係をつかみやすい。直衣(のうし)の光源氏と狩衣(かりぎぬ)の惟光 (これみつ)、すぐに見分けられてちょっとうれしい。
隠者による無常観の文学といわれる「徒然草」を兼好の自伝的恋愛物語と読んだのが『恋の隠し方』。章段の順序を組み替えれば、深夜、雪の中で男女が語る場面は、兼好と恋人のあいびきに見えてくる。秘めた恋があらわになる短編小説というのだ。
いい男はおしゃれで立ち居振る舞いが優美な人。あたふたと帰る男はダメ。『すらすら読める枕草子』は男と女のエチケット集とし て「枕草子」を読んでゆく。「をかしう見ゆ」が「とってもステキ」とかなりくだけた訳に。「説経の講師は、顔よき」(お坊さんも顔がよくなくっちゃ)と いって、不謹慎だと批判もされる章段さえ、現代の若い女性の心に通じる「永遠の人間心理を突いた名言」という。
「歎異抄」も新訳が次々と出ているが、親鸞仏教センター訳は座談会のように解釈を議論する過程も載せているのが斬新だ。「善人 なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」で有名な第3条は「私たちの倫理規範における善人・悪人とは意味が違う」「善人を、他の訳語にしないほうがいいと 思います」「インパクトがなくなります」と新しい表現を探る。
古典読破の最終手段はマンガ。『五月女(そおとめ)ケイ子のレッツ!!古事記』(講談社)は現代人に理解の難しい神々の物語をえいやっと大胆に解釈。ここまで笑いっぱなしの古典はほかにない。
- 恋の隠し方—兼好と「徒然草」
著者:光田 和伸
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- すらすら読める枕草子
著者:山口 仲美
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- 現代語 歎異抄 いま、親鸞に聞く
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- 五月女ケイ子のレッツ!!古事記
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