コンビニのレジから見た日本人 [著]竹内稔
[掲載]週刊朝日2008年8月15日号
- [評者]永江朗
■定点観測でわかる日本人の劣化
コンビニの24時間営業を規制すべきかどうかが話題になっている。利用者だけでなく、コンビニ側でも意見が真っ二つに分かれているのが興味深い。コンビニ 本部は規制反対がほとんどだが、各フランチャイズ店オーナーはそうでもない。売り上げが上がらず人件費ばかりかさむ夜間は閉めたい、規制で営業時間を短縮 できれば、というのが本音のようだ。
だが、コンビニのあり方については、省エネや経営面以外の観点からも検討されるべきかもしれない。竹内稔『コンビニのレジから見た日本人』は、学生時代からコンビニで働き、今は4店舗を経営する根っからのコンビニ人間が書く、現代日本人論である。
衝撃的である。日本列島に住む人びとは、いま、とんでもないことになっている。これまで日本人劣化論はたくさん書かれてきたが、本書はコンビニという身近な定点観測地での報告だけにショックも大きい。
これまでコンビニはひたすら客に利便性を提供してきた。客の方は、コンビニならどんなワガママでも許される、と考えるように なった。象徴するのがトイレだ。しばらく前から、コンビニはトイレを貸してくれるようになった。慢性下痢腹で頻尿気味の私にとってまことにありがたい。だ が本書によると、借りたトイレを汚し放題の客があまりにも多いというのだ。ほとんど公衆便所感覚。
あるいは、コンビニの店員を人と思わず、欲求不満解消のはけ口にする客。無理難題をふっかける客。商品を壊しても弁償する気の ない客等々。匿名的になってエゴを漏れ放題にするという点では、インターネットの掲示板に似ている。一方、コンビニで働く若者にも、挨拶すらろくにできな い人間が増えてきたと嘆く。「ワタシ、アイサツトカ、キライナンデス」と真顔で言った女性従業員のエピソードには凍った。
コンビニが原因なのか、それとも日本社会の縮図なのか。コンビニの文化的意味について、考え直す時期かもしれない。
- コンビニのレジから見た日本人
著者:竹内 稔
出版社:商業界 価格:¥ 980
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