2008年8月1日金曜日

asahi shohyo 書評

辺境の旅 未知との出会いを求めて冒険を

[掲載]2008年7月27日

  • [評者]丸山玄則

 夏本番。都心の暑さにうんざりする毎日だ。憂うつな気分を紛らわせようと、「辺境本」を探してみたところ、近刊にかぎっても実に豊富。通勤電車のなかで「未知との出会い」に胸が躍った。

 『辺境の旅はゾウにかぎる』は人前では読めない。楽しくてついほおが緩んでしまうから。ミャンマーと中国の国境にある、アヘン を資金源とする反政府ゲリラの拠点から日本に帰国するまでのドタバタを記した「アヘン王国脱出記」をはじめとする辺境ルポ、「UMA(ユーマ)(謎の未確 認動物)」などをテーマにした対談など、あきれかえるほどの好奇心と冒険心が詰まっている。今の時代でも素朴な夢を持てるのだと気づかされる。後半のブッ クガイドは、そのまま今回のテーマのお薦め本だ。

 アマゾンの旅は冒険の定番だが、読んでみるとやっぱり面白い。『アマゾン源流「食」の冒険』で著者は、サルや子ガメの卵など 「町や村の人々が昔から森や川の恵みとして口にしてきたもの」を、現地の人に勧められるまま、時には戸惑いつつも食べ、「忘れられない記憶を胃にしみこま せて」きた。

 『「十五少年漂流記」への旅』は、椎名誠が物語のモデルとなった島を探しに、地球の裏側にある無人島から、ニュージーランドの "絶海の孤島"に渡る。「知らない世界を目の前にしたとき、価値観は変わり、それら未知のものに対応していくたびに思考がひろがり、深くなっていく」とい う言葉に深く納得。そんな心こそ失いたくないものだ。

 『異郷日記』は著者の行動力と博識、情感あふれる文章が異郷に誘い込む。奴隷貿易の拠点となったザンジバルなどの、現地の人たちの息づかいが伝わってくるような一冊。女性にはこまやかで清廉な文でつづられた乃南アサ著『ミャンマー』(文芸春秋)がお薦めだ。

表紙画像

辺境の旅はゾウにかぎる

著者:高野 秀行

出版社:本の雑誌社   価格:¥ 1,575

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異郷日記

著者:西江 雅之

出版社:青土社   価格:¥ 2,310

表紙画像

ミャンマー—失われるアジアのふるさと

著者:乃南 アサ・坂斎 清

出版社:文芸春秋   価格:¥ 1,400

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