2008年8月8日金曜日

asahi shohyo 書評

感じない子ども こころを扱えない大人 [著]袰岩(ほろいわ)奈々

[掲載]2008年8月3日

  • [評者]瀧井朝世(ライター)

  例えばもし子供に「私、みんなから嫌われているの?」と聞かれたらどう答えるか。「そんなことないよ」と否定すれば心のモヤモヤが霧散するとは限らない。 でもそう言われた以上、子供は自分の感情を封印するしかない。何を聞いても「別に」「分からない」と言う子供が増えたのは、大人に原因があるのではない か。そして大人自身、自分の中のマイナス感情を押し殺してはいまいか。

 著者は教育相談員の経験もある心理カウンセラー。自分の感情との向き合い方、相手の気持ちの受け入れ方を分かりやすく解説。オ ビには「『こころの力』を育てる。」とある。「今の社会には、ネガティブな気持ちを持つことが許されない風潮がある。だからみんな苦しくなる。そうした感 情をあえて表明する必要はないけれど、心の中で持っているのはかまわない、無理やり否定しなくていいと著者は言っています」と当時の担当編集者、池田千春 さん。

 01年の刊行だが、この7年間地道に売れ続けてきた。今年2月に女性客層に強い横浜のブックスサガ長津田店で大きく仕掛けたところ、1カ月で120冊超と、郊外型書店としては異例の販売部数に。そこから他の書店にも広まっていった。

 読者層は半数以上が女性で、育児中の親や教育関係者の読者が多いようだが、「大人同士のコミュニケーションの参考にもなる。人 間関係づくりの本としても読むことができます」と、書籍販売部の橋本美紗子さん。チェック項目や練習問題など読者が参加できる要素が多数あり、読者が自ら 考えるようにうながす。自分の感情や思考のクセに気づく、よいきっかけとなる。

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 22刷11万1千部

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