2008年8月2日土曜日

asahi shohyo 書評

探険倶楽部 AGAIN vol.1

[掲載]2008年7月25日夕刊

■迷子になる楽しさを問い直す雑誌

  「探険」という言葉に憧憬(どうけい)や郷愁を感じる人は多いだろう。この語には、険しい山野を歩き回るだけでなく、見知らぬ何かとの出合いという側面も あり、そのことに胸ときめかせた昔が懐かしくもなるのだ。十数年前に出されていた『探険倶楽部』(青人社)は、そんな人々の探険ごころを刺激し、楽しませ てくれた。その雑誌が12年を経て、山と溪谷社から復活した。

 かつて西表島の密林、小笠原諸島の無人島、知床半島の突端といった秘境の数々を、実に丹念に歩き、リポートするという姿勢は、 今回も生かされている。日本編として東京都の御蔵島、栃木県・足尾から奥日光へと続く廃道、あるいは青木ヶ原樹海の中の洞窟(どうくつ)など。そして海外 編は、ニューカレドニア島を横断し、南米インカ文明の痕跡をたどる。こうした地域、場所を「論じる」だけでなく、「歩き方」を指南する点がユニークだ。も ちろん「専門的な知識や技術・装備がないと危険」ゆえに、誰でもが可能というわけではない。したがって、ある程度の経験者のための手引といえる。

 一方、林望、久住昌之などによる「身近な探険」リポートも掲載され、読み物としても満喫できる。秘境といわず普通の旅行であってもよい。表紙でうたわれているように「たまには迷子に」なって、うろうろしてみるのも楽しいはずである。

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