発達障害の子どもたち [著]杉山登志郎
[掲載]2008年06月01日
[評者]小柳学(編集者)
発達障害——自閉症、アスペルガー症候群、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、学習障害など——の症状について正しい知識を紹介したうえ、周囲の対応の仕方、薬の功罪を含めた治療法を語る。
著者は、児童精神科医として子どもたちを長く診てきた。その経験をもとに、個別の事例をあげる。自閉症の子どもが養護学校に入って職業訓練を積んだのち、企業に入って自立した成功例。また治療の失敗例も紹介していきながら、子どもたちの世界を伝えていく。
「発達障害は一生治らないし、治療方法はない」。こんな意見に対して、著者は完全な誤りであるという。発達障害という言葉も、本書で便宜上使っているだけで、正しくは「発達の道筋の乱れ」「発達の凹凸」の意味とする。
「ハンディキャップが小さくなるプロセスが書いてある本です」と現代新書出版部部長の岡本浩睦さん。
「こころ」の分野は現代新書の柱のひとつだが、それにしても異例の動き。背景には、去年から実施されている特別支援教育がある。具体的な教育方法が示されず、親や教師にも発達障害の基礎知識がない。
混乱する現場から、「子どもの感じていることが理解できた」という保護者、「コミュニケーションを図るうえでありがたい本でした」という教師やスクールカウンセラーの声がとどいている。女性が6割を占める。
地元密着型の小さな書店からの注文が多いのが特徴という。ふだん大きな書店に行く時間のない人が、切実な状況からすぐに学校近くの書店へ……ということを想像する。
◇
10刷7万部
|
0 件のコメント:
コメントを投稿