2008年6月25日水曜日

asahi shohyo 書評

人生は勉強より「世渡り力」だ! [著]岡野雅行

[掲載]2008年6月22日

  • [評者]梶山寿子(ジャーナリスト)

■泥臭くて魅力的な職人語録

 「人より先につくって、早く儲(もう)けて、見切りどきを間違えないでやめる。まさに『見切り千両』、世渡り力をたっぷり学んだ、俺(おれ)の商売の鉄則だね」。こんな調子で繰り出される"岡野節"が小気味良い。

 著者は、「痛くない注射針」をつくったことで知られる町工場の経営者。その「世界一の職人」が腕や技術と同じくらい重要視して いるのが世渡り力なのだ。世渡り力とは「こすっからく生きていく、安っぽい手練手管」ではなく「人と情報のマネジメント力」のこと。人づきあいを大切にし て情報収集に力を注いだからこそ今があるというわけだ。

 「商売のポイントは周囲を儲けさせること」「義理を欠くと、そのツケは必ず回ってくる」「絶対についてる人間とつきあえ」「人 は、他人の自慢話は話半分に聞くが、第三者がほめると信用する」など、思わず赤線を引きたくなる処世術がずらり。過去の著作との重複は気になるものの、人 生経験に裏打ちされた語録にはやはり魅力がある。「大企業と連名で特許を取れば、他社は手出しできない」といった経営ノウハウも参考になるだろう。

 ナメてくる相手を返り討ちにする、嫌な人間に一泡吹かせるなど、痛快なエピソードも満載。「落語は俺の"知恵袋"」と言うだけあって、話のツボは外さない。無味乾燥なMBA的ビジネススキルとは一線を画す泥臭さ。若い人にこそ、読んでほしい。

表紙画像

人生は勉強より「世渡り力」だ!

著者:岡野 雅行

出版社:青春出版社   価格:¥ 788

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