2008年6月21日土曜日

asahi shohyo 書評

2人の宗教学者が語る、日本人にとっての「死」とは

2008年6月21日

  日本は世界屈指の長寿国であると同時に自殺大国ともいわれる。一方で、「あの世」や霊の話題がテレビや雑誌に頻繁に登場する。そんな日本人にとっての 「死」を、山折哲雄さんと島田裕巳さんの2人の宗教学者がさまざまに語り合った。6月刊の朝日新書『日本人の「死」はどこにいったのか』が、それだ。

 山折さんは「人生80年」時代を「生と死の間に老いと病が割り込んできてわがもの顔にふるまい、コントロールがままならなくなったのである。これまでの死生観が間に合わなくなったのではないだろうか」と読者に「死に支度」をともに考えようと説く。

 島田さんは「人間はいつか死ぬんですが、その感覚が長寿社会のなかで薄れてきてしまった」と指摘し、「私たちの手に、いかに死を取り戻していくのか。それが、今の課題である」とする。

 同書によると、送り火や海上浄土など、日本の伝統的な風習や思想では、死は身近なものととらえられていた。それが無常観や「死ぬ覚悟」につながったという。

 では、現代の日本人は、こうした日本古来の死とのつきあい方をとりもどせないのだろうか——。

 2人の宗教学者の論議は、現代日本での死に方のむずかしさをどう乗り越えるか、に向かっていく。

表紙画像

日本人の「死」はどこに行ったのか (朝日新書 (115))

著者:山折 哲雄・島田 裕巳

出版社:朝日新聞出版   価格:¥ 777

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