2008年6月7日土曜日

asahi international life food Kakinotane Kamedaseika

「マティーニともよく合う」 柿の種が米進出

2008年06月07日12時13分

 ビールのおつまみや、お茶菓子として、「柿の種」は国民的な米菓だ。ちょっぴり辛みがあり、風変わりな形をしたこのあられが新潟県内に誕生して85年。 米菓最大手の亀田製菓(新潟市)は今年、米国での試験販売に乗り出した。「柿の種」から「Kakinotane」へ。新潟の味が世界へ羽ばたく。

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マティーニともよく合う=帝国ホテルのオールドインペリアルバー

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米国進出した「kakinotane」。高級感あふれるパッケージだ=亀田製菓提供

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包装して箱詰めされる浪花屋の「元祖柿の種」=長岡市摂田屋町

 亀田製菓は4月、カリフォルニア州トーランスに「柿の種」を販売する100%子会社「KAMEDA USA」を設立した。同社の海外進出は初めてだ。

 新潟市の本社工場で製造した「柿の種」に、現地で米国産ピーナツを加えて詰める。ロサンゼルス市内のスーパー数店舗で試験販売が始まった。

 「出足はほぼ順調」と本社経営統括本部主任の吉田琢弥さんは話す。

 同社によると、米国内の米菓市場は小売り金額で約200億円ほど。米国人の健康食品ブームに乗って脚光を浴びつつあるという。

 「実は、これまでも柿の種は米国内のスーパーで売られていました。輸入業者が日系人向けに扱っていたのです」と吉田さん。

 が、今回の米国進出は「メーンストリーム」(主流層)が狙い。その多くが肥満に悩んでいるという報告がある。

 「いわゆるチップス系のお菓子に比べ、米菓は低カロリーかつ低アレルギー。米国では自然食品を扱う『スペシャルストア』がブームで、そこで米菓の販売が伸びている。柿の種のヘルシーさをアピールしたい」

 西海岸を中心に取り扱い店舗を増やしてゆき、全米に広げたい考えだ。

 ■帝国ホテルが考案

 果たして、外国人に受け入れられるのだろうか。

 「昔からとても人気がありますよ」と、帝国ホテル(東京都千代田区)・オールドインペリアルバーの担当者。ここでお酒を注文すると、無料のおつまみとして「柿の種」が出る。日本人よりむしろ外国人に好評だという。

 実は、この帝国ホテルこそ、柿の種とピーナツを組み合わせた、いわゆる「柿ピー」を日本で初めて考案し、提供したという伝説を持っているのだ。

 広報課副支配人の宮崎真理さんによると、現在の本館が完成したのは70(昭和45)年。だが、「柿ピー」は、フランク・ロイド・ライトが設計した旧帝国ホテル時代からバーで提供されていた。

 開業119年を誇る同ホテルは、外国の要人を泊める施設として国策で建てられた。西洋にならい、酒のつまみとしてサービスナッツを日本で初めて出したのも同ホテルだ。「その際、なにか日本らしさを出そうとして、柿の種が選ばれたのでは」

 このバーでは、新潟県内産の柿の種と千葉産のピーナツを7対3の割合で配合。外国人には「ジャパニーズライススナック」と紹介している。

 ビールはもちろん、ジントニックやマティーニなどのカクテルにも驚くほど合う。

 「ちょっぴり辛いので最初は戸惑う。でもすぐにクセになる。外国のお客様は本当によく召し上がります」

 「柿の種」は、バリエーションも豊富だ。

 「瑞花(ずいか)」(新潟県長岡市)のものは、「からし」と「わさび」の2種類で、大きさは亀田製菓などの2倍。ピーナツはない。「ピーナツと一緒にどさっと食べるのではなく、一粒一粒を味わってほしい」と、社長の郷礼子さん。

 親会社の岩塚製菓(同市)とは一線を画した高級感が売りだ。販売も直営店や百貨店などに限られ、価格も高め。東京・銀座にも2店の直営店がある。

 チョコレートで包んだ「柿の種」も瑞花が先駆け。「チョコの種」「コーヒーの種」「あずきチョコ」「きなこチョコ」の4種類ある。

 商品化のきっかけは、「ポッキーと柿の種を一緒に食べたらおいしかった」という社員の声。溶けやすく、冬季限定の商品だが、クリスマスやバレンタインデーの贈り物としても人気があるという。

 竹内製菓(同県小千谷市)は、原料にこだわり、昔ながらのあられ作りに徹している。「極上柿の種」は国内産もちごめを100%使用し、値段も量産品の3倍。「うちの特徴はもち米ならではの香ばしい風味」と竹内和孝社長。

 国内の菓子メーカーのうち何社が「柿の種」を発売しているか判然としない。期間限定商品を含めると、「無数にある」(あるメーカー)。ネットで 「柿の種」を検索しただけでも、「マヨネーズ味」「塩だれ味」「カレー味」「たこやき味」「青のり味」などと百花繚乱(りょうらん)の感がある。

 ■金型つぶれて柿型に

「柿の種」を最初に作ったのは、長岡市摂田屋町の「浪花屋製菓」だ。創業は19(大正8)年。やがて薄く切ったもちを何枚かに重ね、小判型の金型で 切り抜いてあられを作り始めた。が、その金型をうっかり踏みつぶしてしまい、元に直らないのでそのまま使用したところ、ゆがんだ形のあられができた。得意 先から「柿の種に似ている」と言われ、ヒントを得て、23(大正12)年に「柿の種」が誕生した。同社製品を「元祖 柿の種」と呼ぶゆえんだ。創業者は米 菓振興のため進んで製法を伝えたため、多くの業者が追随したという。ピーナツ入り柿の種を県内で初めて商品化したのは亀田製菓で、66(昭和41)年に発 売された。(三沢敦)




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