2008年6月10日火曜日

asahi shohyo 書評

「白い光」のイノベーション [著]宮原諄二

[掲載]週刊朝日2008年6月13日

  • [評者]永江朗

■「光」を発明しつづけてきた人類、蛍光灯も「つなぎ」らしい…

 東芝グループの東芝ライテックは、2年後の2010年をめどに、一般的な白熱灯の生産をやめる。地球温暖化防止のため、蛍光灯への切り替えを促すためとか。実際、白熱灯と同じ口金の蛍光灯がでていて、特殊なもの以外は切り替え可能だ。

 最近は白熱灯の色を再現した蛍光灯もある。だが、比べてみるとやはり違う。私には白熱灯の光の方が好ましい。しかし、「温暖化防止のため」と言われると反論しにくい。昔の、「欲しがりません勝つまでは」とか「贅沢は敵だ」の時代も、こんな感じだったのだろうか。

 宮原諄二『「白い光」のイノベーション』は、人類が白い光を求めてどのように発明・発見を重ねてきたのかという、文化史、技術史である。著者は東京理科大専門職大学院の教授。

 「白い光」というのは太陽の光のこと。つまり私たちの祖先は太陽の光を手に入れようとしてきた。原人のころから、人類は炎の明かりを使ってきた。だが黄色い炎は太陽とずいぶん違う。

 最初にあらわれた画期的な照明はガス灯。いまでもキャンプ用のランタンなどに使う。あれはガスの火の色ではなく、ガスの炎で発 光するマントルといわれる部分(ガスランタンだと、白っぽい綿帽子みたいなやつだ)の色である。ガス灯はやがて白熱灯に替わる。エジソンの電球に京都の竹 が使われたのは有名な話。

 たいまつ・ろうそく・ガス灯・白熱灯と、蛍光灯とは、光る原理が違う。たいまつから白熱灯までの原理は熱放射現象。熱くなった ものが光を出す。蛍光灯はルミネセンス(蛍光現象)で、熱をともなわず、エネルギーの受け取りによって光る。原理が違うのだから、光の感じが違うのも当然 か。

 だが、蛍光灯も問題ゼロというわけではない。水銀を使っているからだ。蛍光灯の次は発光ダイオードの時代だと本書は言う。蛍光灯はあくまで「つなぎ」ということか。わが家の電球、いつ取り換えようか。

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