2009年1月28日水曜日

asahi shohyo 書評

「依存症」の日本経済 [著]上野泰也

[掲載]2009年1月25日

  • [評者]勝見明(ジャーナリスト)

■内と外からあるべき姿探る

 数字の向こうに何を見るか。エコノミストがデータを読むとき、その人の価値観や信念といったアナログの力が問われる。著者が専門誌のエコノミストランキングで6年連続1位に輝いているのもその力によるのだろう。

 今回、市場データを「依存症」の切り口でとらえる。個人消費の女性依存、今も残る建設業依存や規制依存、教育の学習塾依存、経 済の米国依存……。11の症状から浮かぶ日本の姿はどこか健全性に欠ける。その対応策が示されるが、他方、食料の海外依存や家計運用の預金依存などについ ては、「何が問題なのか」と論点のズレや論調の問題点を指摘する。ここに価値観がにじみ出る。

 自給率向上を理由に国内農業を保護するより、競争力の向上を求める。金融リスクに対する米国人との感覚の違いから、「リスクをとる」という言葉を軽々に使うべきでないと批判する。日本を内と外の両面から見て、あるべき姿を探る。

 それは、少子高齢化で「10年先」を行く秋田県をモデルに日本の未来図を読む終章にも表れる。中でも少子化を「逆バネ」にした少人数学級で、小中学生の学力を全国最高へ底上げした公教育の施策は示唆的だ。

 秋田は著者の両親の郷里。毎年夏休みを過ごした「心のふるさと」の描写は心なごむ。それがアナログ力と結びついているなら、「日本もまだ捨てたもんじゃない」との思いもわきあがる。

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