2009年1月20日火曜日

asahi industry muda Mottainai

ムダに敏感なお肌を磨く 「不要品」で洗顔剤や化粧水

2009年1月18日13時30分

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 その地方ならではの素材を生かした「ご当地化粧品」が続々と生まれ、2兆円市場といわれる業界で異彩を放っている。火山灰や曲がったキュウリなど、捨て るしかなかった不用品が原料の洗顔剤や化粧水も登場。「もったいない」との意識から生まれた品々は、流行に敏感な消費者の心をつかめるか。(中村純)

 ■鹿児島 火山灰を洗顔剤に

 昨年5月、シンガポール。もみしごかれた濃密な泡が女性の肌になでつけられると、集まった人々からどよめきが起きた。原料が火山灰と知ると、「アンビリーバブル(信じられない)」の声が重なった——

 鹿児島県姶良(あいら)町の化粧品会社・天元(てんげん)がつくる洗顔剤「きんごきんご」は、豊かな泡立ちと保湿性が売りだ。シンガポールでの出張販売では10日間で1千万円を売り上げたといい、社長の又野佳洋子さん(49)はアジア市場での手応えをつかんだ。

 鹿児島の桜島は最近おとなしいが、いったん噴火すれば火山灰が一帯に降り注ぐ。宅地に積もった灰はポリ袋に入れられ、ごみとして捨てられる。そんな火山灰を素材にした化粧品がいま、鹿児島で相次いで誕生している。その「元祖」ともいえる商品を生んだのが天元だ。

 「火山灰粒子にはマイナスイオンが帯電し、プラスに帯電した毛穴の汚れを吸い取りやすい。肌によくなじむケイ酸アルミニウムも含まれている」と佳洋子さん。その効果にいち早く注目したのが、父親で同社会長の一己さん(80)だった。

 一己さんは海軍時代の経験から、火山灰が軍艦のマスト磨きなどに利用されていたことを知っていた。金属の磨き粉として広く活用できないか自宅で研究を続け、20年前、公務員を退職後に会社を設立。火山灰を使った台所洗剤の販売を始めた。

ほどなくして、「使っていたら手が白くなった」と利用者から反応が寄せられ、洗顔剤に応用できないかと開発に着手。肌を傷つけないかという心配もあったため火山灰の超微細粒子を球状に加工する工夫をし、5年がかりで商品を完成させた。

 薩摩弁で「きれいになった」を意味する「きんごきんご」は135グラム入り2940円で1995年から発売。効果に個人差はあるものの、「火山灰は、いまや鹿児島の資産になったと思います」と佳洋子さんは話す。

 ■福島 「曲がりキュウリ」の化粧水

 同じ不用品でも、「曲がりキュウリ」は生産農家の収入に直結する問題だ。露地キュウリの生産量全国一の福島県須賀川市では、曲がり幅が3センチを超す規格外品が生産量全体の1割前後を占め、年間1千トンほどが捨てられていた。

 そこで生産者側が思いついたのが、化粧品への転用だった。昔から肌のパックに使われたキュウリの保湿性に着目し、3年前から埼玉県朝霞市の化粧品会社コ スメサイエンスに化粧水と美容クリームの製造を委託。化粧水は120ミリリットル入り1890円で、売上額は年間800万円ほどで推移している。

 「新たな収入源の確保やブランド力の向上につながる」と発売元の須賀川市農業開発公社。家族で化粧水を愛用しているというキュウリ農家の男性は「家内はもちろん、私もゴルフ焼けに、野球部の息子も練習後にひとふり」とPRする。

 ■価格競争力や販売戦略に課題

 日本酒、温泉、竹炭……と、ご当地化粧品の素材は多様化する一方だ。地方の業者はもちろん、大手も地場産品を生かした商品開発に余念がない。消費者の安全志向に応えるためには、化粧品にも「産地明示」や「天然素材」が不可欠と判断しているからだ。

「曲がりキュウリ」のようにリサイクルの発想から生まれる製品は多い。たとえば福岡県桂川町の茜屋が販 売するせっけん「シーソープ」は、本業の明太子(めんたいこ)製造で余った大量の昆布の粉末を原料にしている。「ごみを出したくなかった」(店主の大山真 理子さん)という。

 ただ、こうした地場の化粧品は、「特産物」として売られているのが実情だ。少量製造のためコストがかかり、割高なものもある。化粧品としてブランド品と張り合うには、価格競争力や販売戦略面で克服すべき課題が少なくない。



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