「アイヌの人々は先住民族」官房長官、決議受け表明
2008年06月06日13時27分
アイヌ民族を先住民族として認め、関連する政策をさらに推進するよう政府に求める国会決議が、6日の衆参両院本会議で全会一致で可決、採択された。町村官房長官は決議を受けて所信を表明し、アイヌ民族について「先住民族」との認識を表明した。
町村官房長官は「アイヌの人々が日本列島の北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族であるとの認識のもと、 国連宣言における関連条項を参照しつつ、これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策の確立に取り組む」と述べた。
政府は96年の有識者懇談会報告書でアイヌ民族の先住性と民族性は認めた。だが、「先住民族」の表現は、定義がはっきりしないなどとして使ってこ なかった。昨年9月に日本も賛成して国連で採択された「先住民族の権利に関する宣言」では、先祖伝来の土地の権利など幅広い権利を認めており、明確に先住 民族と認めた場合、土地補償などの権利の主張が頻発しかねないとの懸念があるためだ。
決議は、(1)アイヌの人々を日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族として認める(2)高 いレベルで有識者の意見を聴き、アイヌ政策をさらに推進する——の2点を政府に求めており、町村氏はこの決議文を引用する形で、「先住民族」と言及した。 ただ、この発言がどの程度、アイヌ民族の権利の保障につながるかは不透明。政府関係者は町村氏の発言について政府方針の転換ではないと説明している。
町村長官は、決議文で多数のアイヌの人々が「我が国が近代化する過程において、法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされ た」とした部分について「政府として改めてこれを厳粛に受け止めたい」と語った。政府は6日午後、官房長官談話を発表し、アイヌ民族の尊厳回復のあり方を 検討する有識者会議を新設し、アイヌ政策に取り組むことを表明する方針だ。(稲垣直人)
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