意思不明でも家族同意で提供可 「脳死は人の死」前提
成立した臓器移植法の改正A案は、脳死になった人からの臓器提供を増やすため、提供の要件を緩和する。最大の特徴は「脳死は人の死」とする考えを前提に作られている点だ。脳死になった人があらかじめ拒否の意思表示をしていない限り、家族の承諾で提供できるようになる。
意思表示カードの仕組みを維持し、新たに運転免許証や健康保険証への意思表示欄を設けるとはいえ、自分の意思をそれらに記す人が大きく増えない限り、本人の意思が分からないまま家族が臓器提供の可否の判断を求められるケースが増えるとみられる。
06年に中山太郎衆院議員らが提出したA案の根拠になる考え方は、92年に政府の脳死臨調が出した「脳死を人の死とすることについて、おおむね社会的に受容、合意されている」との答申にある。
97年にできた現行法のもととなった「中山案」も、「脳死を人の死」としていたが、衆院通過後、「脳死をめぐり様々な意見がある」として、参院で「臓器移植の場合に限り人の死」とする修正が加えられた経緯がある。
A案ではこの部分が削除された。提出者は「脳死判定を拒否する権利を家族に認めており、一律に死を規定するものではない」(河野太郎衆院議員)と説明するが、「脳死を一律に人の死」としているとの批判が消えなかった。
親族へ臓器を優先して提供する規定も盛り込まれており、臓器移植の機会の公平性確保の観点から問題があると指摘されている。
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