日本人の知らない日本語 [著]蛇蔵、海野凪子
[掲載]週刊朝日2009年7月31日号
- [評者]永江朗
■外国人はカタカナが苦手
日本語ブームとコミックエッセイを足したら『日本人の知らない日本語』。日本語ブームは99年の大野晋『日本語練習帳』あたりに始まり、最近の出口宗和 『読めそうで読めない間違いやすい漢字』にいたる。ただし戦後ベストセラー史を振り返ると、それ以前に井上ひさし『私家版日本語文法』(81年)や丸谷才 一『文章読本』(77年)、郡司利男『国語笑字典』(63年)などがある。言葉に関する本はずっと前からベストセラーの王道なのだ。コミックエッセイの ブームは、たぶん小林よしのり『ゴーマニズム宣言』(93年〜)のヒットから。漫画によるエッセイである。
『日本人の知らない日本語』は、日本語学校講師の海野凪子の原案をイラストレーターでコピーライターの蛇蔵が漫画にしたもの。他 の日本語ブーム本と同じく、思わず「へえー」というトリビアなネタがたくさん出てくる。そのきっかけが日本語を学ぶ外国人からの質問であるところがポイン トだ。たとえば、「教えて頂けますか」と「教えて下さいませんか」の違いであるとか、花札の「あかよろし」の意味であるとか。
「杓子」が「しゃもじ」と呼ばれるようになったのは、室町時代の宮中の女房たちの間で、何にでも「もじ」とつけるのが流行った から。昔から新しい言葉はギャルたちがつくる。外国人が意外と苦労するのはカタカナだそうだ。カタカナにされた外来語は、元の言葉と発音がまるで違うため だ。アメリカで「マクドナルド」と言っても通じない。ためになるなあ。
全143ページ。それで本体880円。漫画としてはちょっと高い。当然、字も少ない。30分で読めてしまう。全215ページで 文字ぎっしり、本体700円の『日本語練習帳』と比べてどうなのか。私はつい文字ぎっしりを選びそうだが、それは私がけちん坊のオッサンだからか。なお、 日本語テスト4の正解に「天候のいかんに関わらず」という文章が出てくるけれども、「拘わらず」のほうがよろしいと思います、凪子先生。
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