2009年7月29日水曜日

asahi shohyo 書評 art Sanzo Wada

近代洋画家・和田三造が描いたイエスの生涯画集

2009年7月29日

写真「十字架を負う」(「和田三造 イエス・キリスト画伝」から)

  近代洋画の画家和田三造(1883〜1967)が、イエス・キリストの生涯を描いた画集が出版された。和田といえば、船に立つ筋骨隆々とした男たちを描い た油彩画「南風」(東京国立近代美術館蔵)が有名だ。1907年の第1回文部省美術展覧会で実質的な最高賞に選ばれた。だが、イエス・キリストの画集は柔 らかなタッチの水彩画で、和田の画業の別の側面が見てとれる。

 出版されたのは「イエス・キリスト画伝」(知泉書館、3780円)と、原画を複製した「イエス・キリスト聖画集」(同、4万2 千円)。哲学者の加藤信朗さんが監修した。加藤さんの母は和田三造のめい。28枚の原画は熱心なキリスト教徒だった母の依頼で制作されたものだ。ほぼ同じ 原画を使った絵本は50年に出版されたが、以後、絶版となっていた。加藤さんは「和田自身はキリスト教徒ではなかったが、和田の亡き母も信者だったので引 き受けた」と話す。

 画集の絵で目につくのは和田独自の解釈だ。例えば、イエスが十字架を背負う場面では、十字架の重みに耐えかねて地面に手をつくイエスの横を、何事もなかったかのように白いヤギが歩く。復活したイエスは、手のポーズから仏様のようにも見える。

 兵庫県の姫路市立美術館では9月12日から10月25日まで「和田三造展」を開く。画集の原画も数点を展示する予定だ。平瀬礼 太学芸員は「和田は洋画の『南風』ばかりが知られているが、図案やデザインにも関心を寄せるなど幅広く活動していた。戯画的な画風のこの絵には、同時期の 和田の特徴がよく出ている」と話している。(西田健作)

表紙画像

和田三造 イエス・キリスト画伝

著者:和田 三造・加藤 信朗

出版社:知泉書館   価格:¥ 3,780

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