2009年7月24日金曜日

asahi shohyo 書評

われらのジョイス—五人のアイルランド人による回想 [編著]ユーリック・オコナー

[掲載]2009年7月19日

  アイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスの素顔を、同郷の学友ら5人が回想した。大学では論文への博士たちの批判を論破し、学士号取得試験で教官の質問を 「無意味なたわごと」と一撃。異国で作家生活の多くを送ったが、有名人となったジョイスをパリに訪ねた友が感じた「悲劇的なくらい孤独」な内面。特に故郷 への思いは印象的で、フランスの作風に関心があるという同郷の芸術家に「あなたの血にあるものを」書けと語り、帰国の意思を問われて「昼も夜も、私は臍 (へそ)の緒のように故国にくっついています」。望郷の人としての姿が切ない。

    ◇

 宮田恭子訳

0 件のコメント: