日本の臓器移植—現役腎移植医のジハード [著]相川厚
[掲載]2009年7月26日
- [評者]小杉泰(京都大学教授・現代イスラーム世界論)
■必要な「尊い善意」生かす論議
著者は、かつてイギリスで腎臓移植を学び、帰国後は日本の第一線で活躍してきた。90年代から現在までに、500例以上の移植を手がけてきたという。
副題にある「ジハード」は「聖戦」と訳されることも多いが、本来は、社会をよくするために奮闘努力することを意味する。まさに、日進月歩の医療現場での奮戦の物語である。
腎臓は二つあるため、患者の親族から生体間で一つを移植することも可能であり、心臓死した第三者からも移植しうる。末期腎不全の患者にとって、根治療法である。
日本では27万人以上が人工透析を受けており、これは全ヨーロッパの数に匹敵する。今後も増加の一途とみられ、腎移植の推進は国民的な課題となる。
著者は、腎臓に限らず、移植医療全体が臓器提供という「尊い善意」によってのみ成立していると明言する。医療従事者の側も奉仕の精神が基本であるべきだ、という。
国会で臓器移植法が改正され、国民的な関心を呼んだが、肝心の善意をいかに生かしうるかを論じずに、この救命方法を発展させることはできない。
- 日本の臓器移植----現役腎移植医のジハード
著者:相川 厚
出版社:河出書房新社 価格:¥ 1,575
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