2009年7月24日金曜日

asahi shohyo 書評

壊れても仏像—文化財修復のはなし [著]飯泉太子宗(いいずみ・としたか)

[掲載]2009年7月19日

  • [評者]松本仁一(ジャーナリスト)

■プラモづくりに似た復元過程

 東京の「国宝・阿修羅展」には、2カ月余で94万人が入場したという。われわれ日本人はよほど仏像好きのようだ。

 そうした古い仏像はどうやって修理するのか。本書は修復専門家による苦労話だ。

 平安期など古い時代の仏像は一木(いちぼく)造りが多い。その後、寄せ木造りの技術が開発される。一木で仏像を彫り出せるほどの大木を探すのは大変だからだ。

 寄せ木造りはパーツごとの製作で、プラモづくりみたいなものだという。胴体や頭部はスライスをつくり、にかわで接着する。にかわの寿命が尽きたら分解やむなしで、その寿命は数十年ぐらいらしい。

 崩れた仏像の「パーツ」が段ボールに放りこんである。それを調べて原形を類推する。手の印形がポイントで、そこから何の仏かを推測するのである。

 中には、いくつかの仏像のパーツを一つの段ボールに入れてしまい、どれがどれやら、というのもある。仁王さまの目玉に石油ランプの底をはめてあった、なんて話は笑ってしまう。

 著者による説明イラストが付いているが、これが漫画タッチでなかなか楽しい。

表紙画像

壊れても仏像—文化財修復のはなし

著者:飯泉 太子宗

出版社:白水社   価格:¥ 1,785

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