2009年2月15日日曜日

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ローマ法王「最大の失態」批判 超保守派司教の破門解除

2009年2月15日13時18分

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写真ローマ法王ベネディクト16世

 世界11億人のカトリック信者の頂点に立つローマ法王ベネディクト16世の足元が揺れている。ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺を疑問視する発言をした 司教の破門を解除したことが「最大の失態」と批判され、法王自身の不人気も相まって、バチカンを訪れる信者の数が大きく減っている。

 バチカン市国は11日、成立から80周年を迎え、本来であれば祝賀ムード一色のはずだが、逆に緊張感に包まれている。きっかけは、教義の解釈をめ ぐる対立から破門された超保守派司教4人に対し、1月に破門の解除を決めたことだ。その1人が、昨年11月にテレビインタビューで「ナチスのガス室で殺さ れた者はいない」とホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を否定したことから、批判が巻き起こった。

 バチカン側は4日に「法王はホロコーストを否定しない立場を明確に表明している」と声明を出したのに続き、8日に法王がメルケル独首相と電話会 談。12日には法王が米国のユダヤ人団体の代表と会見し、キリスト教とユダヤ教の宗教対話の継続とともに、5月に両宗教の聖地エルサレムと聖誕教会のある パレスチナ自治区のベツレヘムを訪問することなどを確認し、火消しに努めた。

 だが、独ではホロコーストの否定や矮小(わいしょう)化は刑法に違反する行為にあたるため、司教のインタビューが収録された独南部レーゲンスブルクの検察当局が捜査を開始。司教の発言を放映したスウェーデンの放送局関係者から事情を聴くなど問題はくすぶり続ける。

 法王はこれまでも、イスラム教の聖戦(ジハード)に否定的な発言をしてイスラム諸国の反発を受けるなど、失態が目立つ。今回の問題では「政治的センスのない発言や鈍い対応など、最大の失態」(バチカン関係者)との声も上がっている。

バチカン巡礼者も減っている。ローマ法王庁によると、法王が姿を見せる日曜日恒例の「正午の祈り」や、水曜日の一般謁見(えっけん)に訪れる信者の数は法王就任翌年の06年の年間320万人から08年は220万人と100万人も減った。

 法王の人気の落ち込みについて、イタリアのエスプレッソ誌は「考え方が厳格で、見た目が古臭い。信者に関心の高い就職難や貧困、子供の将来への不安といった現実の問題を見ていない」と分析している。(ローマ=南島信也、ベルリン=金井和之)

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 〈バチカン市国〉ローマ市街の一角に44ヘクタールの国土を持つ、人口約800人の世界最小国だが、全世界のカトリック教徒約11億人に影響力を持つ。 19世紀に法王領を失って以来、緊張関係にあったイタリアのムソリーニ政権と1929年、市国内での法王の支配権を認めるラテラノ条約を結び和解、独立国 家となった。軍はなく、スイス衛兵隊が警備。

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 〈バチカンとユダヤ教〉第2次世界大戦中のローマ法王ピオ12世(在位1939〜58年)は、ホロコーストを公の場で非難しなかったとして戦後批 判された。また聖地エルサレムの帰属問題などからバチカンは48年建国のイスラエルと93年まで国交を結ばなかった。ヨハネ・パウロ2世(在位78〜05 年)はキリスト受難の責任をめぐって教会が反ユダヤ主義を助長してきたとして謝罪し、00年エルサレムを訪問。ベネディクト16世も就任翌年の06年にア ウシュビッツを訪問したが、ピオ12世を聖人に列する動きなどをめぐり、今なおバチカンを非難するユダヤ教関係者が少なくない。



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