オバマ米大統領の施政方針演説全文(1)
オバマ米大統領が24日に行った施政方針演説の全文は次の通り。
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下院議長、副大統領、議員の皆さん、そして米国のファーストレディー。
私は今晩、この偉大なる議会の構成員の皆さんに向けて演説するだけでなく、我々をこの場に送り込んだ国民たちに率直に、そして直接、語りかけるためにやってきた。
いまこの瞬間を見つめている多くの国民にとって、我が国の経済状況は何にも増して最大の懸案だということはわかっている。それは正しい。あなた自身が現 在の景気後退の影響を受けていなくても、あなた以外の誰か、友人や隣人、家族など、その影響を受けた人が周りにいるはずだ。
我々の経済が危機的状況にあるというさらなる証左はもはや聞く必要はない。なぜなら毎日、実際にその危機の中を生きているからだ。朝起きたとき 真っ先に頭に浮かぶ懸案であり、眠れぬ夜の原因なのだ。引退まで勤めるはずだったのにクビになった仕事。夢を築いてきたのに、今やわずかな細い糸でつな がっている事業。あなたの子どもが(学費が工面できないため)そっと封筒に戻さなければならなかった大学の入学許可通知。この景気後退の影響は現実であ り、いたるところに現れている。
我々の経済が弱体化し、自信はぐらつき、まさに困難で不確実な時代を生きているとしても、すべての米国民にこのことを知っておいてほしい。
我々はこの国を再建する。我々は立ち直る。米国はかつてより強くなって再び姿を現すだろう。
今回の危機の深刻さがこの国の運命を決めることはない。我々が抱える問題の答えは、我々の手の届くところにある。それらは研究所や大学にある。農 場や工場にある。起業家たちの想像力の中に、地球上で最も勤勉な国民(である米国民)の誇りの中に存在する。米国を人類の繁栄と進化を推し進める最大の原 動力としたこうした資質を、我々はまだ豊富に持ち合わせている。いまこの国に必要なのは、皆が力を合わせて直面する困難に大胆に立ち向かい、我々の未来に もう一度、責任を持つことである。
自分に正直になってみれば、我々は、政府としても、国民としても、あまりに長い間、これらの責任を果たしてこなかったことを認めるしかない。こん なことを言うのは、誰かのせいにするためでも、過去を振り返るためでもない。どうしてこうなったかを理解することでしか、この苦境から脱する方法はないか らだ。
実際、我々の経済は一夜にして下降に入ったわけではない。住宅市場が崩壊し、株式市場が暴落したときにすべての問題が始まったわけでもない。もう 何十年も、我々の生存は新しいエネルギー源を見つけることにかかっていると知りながら、我々は今日、これまで以上の石油を輸入している。医療費が毎年、我 々の貯蓄をより大きく侵食しているとわかっていながら、改革を先送りしている。子どもたちは世界市場で仕事を求めて競っていかなければならないのに、あま りに多くの学校がその準備をさせていない。こうした問題が一つも解決されないのに、我々は個人として、また政府を通じて、過去にない規模で支出を続け、負 債の山を築いてきた。
言い換えれば、我々はこれまで、目先の利益がしばしば長期的な繁栄より重んじられ、次の支払日、次の四半期、次の選挙の先を見ない時代に生きてき た。黒字は未来に対する投資の機会ではなく、富める者への富の移転の口実になってしまった。手軽に利潤を得るために規制は骨抜きにされ、健全な市場は犠牲 になった。人々は返す余裕がないのを知りながら、不良貸し出しであっても売り込んでくる銀行や貸金業者から金を借りて家を買った。この間、必要な議論や困 難な決断は常に先送りされてきた。
つけを清算する日が来た。我々の未来に対する責任を取る時だ。
雇用から始めよう。
私は就任してすぐ議会に対し、人々に仕事を取り戻し、収入を得られるような再生計画を大統領の日(2月の第3月曜日、祝日)までに送るよう要請した。よ り大きな政府を信じているからではない。私はそれを信じてはいない。我々が引き継いだ巨額の債務を心にとめていないからでもない。私は心にとめている。私 が行動を求めたのは、そうしなければもっと多くの雇用が失われ、より多くの困難を引き起こすことになったからだ。
事実、行動しなければ、今後数年間わたって経済成長の低迷を確実にし、長期的債務をさらに悪化させていたかもしれない。私が迅速な行動を強く求めたのはそのためだ。そして今夜、私は議会がそれを実現したことに感謝し、景気対策法がいまや法律になったことを喜んでいる。
今後2年にわたって、この計画は350万人の雇用を守ったり、創出したりする。90%以上は民間部門での仕事だ。道路や橋の再建、風力タービンや太陽光パネルの建設、ブロードバンド敷設、大量輸送機関の拡大などの仕事だ。
この計画で、職を失わずに子供たちを教育できる教師がいる。医療専門家は病人の看護を続けることができる。今夜、今なおミネアポリスの路上には57人の警官がいる。この計画で、警察が踏み切ろうとしていたレイオフを食い止められたからだ。
この計画で、米国の勤労者世帯の95%が減税を受けることになる。4月1日以降の給与明細で確認できるだろう。
この計画で、授業料の支払いに苦しむ家庭は、大学4年間にわたって2500ドルの税還付を受けられる。この不況で失業した米国人は、拡充された失業手当給付金を受けられるし、医療保険を継続できることは、この嵐を乗り切るのを助けるだろう。
この議場や自宅で見ている人の中に、この計画が機能するかどうか懐疑的な人がいることは知っている。その懐疑心は理解している。ここワシントンで 我々は、善意がいかに素早く約束破りと無駄遣いに変わるかを目の当たりにしてきた。これだけの規模の計画には、正しく実施するための巨大な責任が伴う。
だから私はバイデン副大統領に、この困難で空前の規模の監視の努力を担うよう求めた。ジョー(副大統領)に逆らう人はだれもいないからだ。私は、 全閣僚と同様に国中の市長や知事にも、1ドルごとの支出について私と米国民への説明責任を負うと伝えた。ありとあらゆる無駄と不正を探し出すため、実績が あって積極的な監察官を指名した。すべての米国人が、どこでどのように税金が使われているのか調べることができるよう、我々は「recovery・ gov」と名付けた新しいウェブサイトを立ち上げた。
我々の再生計画は、経済を軌道に戻す最初のステップだ。だが、それは最初のステップにすぎない。我々がこの計画を完全に実施したとしても、金融システムを深刻に弱体化させているこの信用危機を解消しない限り、真の回復はありえないからだ。
私は今夜、この課題について平明かつ率直に語りたい。それがあなたやあなたの家族の幸せに直接影響することをすべての米国人が知る必要があるから だ。あなたたちはまた、国中の銀行にある預金が安全であること、保険契約が守られていることも知る必要がある。金融システムが機能し続けることも信用でき る。それは心配の種ではない。
心配なのは、この国で貸し出しが再開しない限り、景気は回復し始める前に窒息してしまうだろうということだ。
金融の流れは経済の血液だ。お金を借りられるということは、住宅や自動車から大学教育に至るまで、あらゆるものの購入資金を賄うということだ。商店がどうやって棚に商品を置くか、農場がどうやって器具を買うか、企業がどうやって給料を払うか、ということだ。
しかし、金融はその流れを止めてしまった。不動産危機から生まれたあまりに多くの不良債権が、あまりに多くの銀行の財務にのしかかっている。こんなに多 くの債務を抱え、ここまで信頼感がなくなれば、銀行は怖くて、家計にも企業にも、そしてお互いにも、もうお金を貸せない。貸し出しがなければ、家庭は住宅 や自動車を買う余裕がない。企業は従業員の解雇を迫られる。我々の経済はさらに苦しみ、金融はもっともっと干上がってしまう。
だからこそ、この政権は素早く、そして積極的に動き、この破壊的な悪循環を止め、信頼を立て直し、貸し出しを再開させようとしている。
そうしたことをいくかのやり方で進める。まず第一に、我々は新しい貸し出し基金をつくる。自動車ローンや大学教育ローン、中小企業融資が提供されるよう促すための過去最大の取り組みだ。経済を動かし続ける消費者や起業家向けのものだ。
第二に、我々は住宅計画を立ち上げる。家を手放す危機に見舞われた家庭が月々の支払いを減らすとともに、住宅ローンの借り換えができるように手助 けする。この計画は投機家を助けるものではないし、本当は買えるはずのない家を買った人を助けるものでもない。住宅価値の下落に苦しむ何百万もの米国民を 助けるものだ。米国民は、住宅計画がすでにもたらしている低金利の恩恵を受けることができる。実際、住宅ローンの借り換えを行う平均的家庭は、返済を年に 約2千ドル軽減できる。
三番目に、我々は、米国民が頼りにしている主要な銀行が、さらに厳しい時期を迎えたとしても十分な信頼があり、十分な貸出資金があることを保証す るため、連邦政府の総力をあげて行動する。主要銀行が深刻な問題を抱えていることが分かれば、責任者を追及するとともに、必要な調整を行わせ、財務内容を きれいにするための支援を行い、われわれ国民と経済に仕えることができる強い金融機関の存続を確かなものにする。
ウォール街というのはいつであっても、条件をつけずに銀行を救済し、無謀な決定の責任を誰にも取らせないようなやり方のほうが、もっと心地よく感 じるだろうということは分かる。しかし、そんなやり方では問題は解決しない。我々の目標は、米国民や米国企業への貸し出しが再開し、危機が完全に終わる日 が早く来るようにすることなのだ。
私は、受け取る支援に対する完全な説明責任を銀行に果たさせるつもりだ。銀行はいまや、(使われる)税金が米国の納税者への貸し出し増加にいかに つながるかをはっきりと示すことが求められる。最高経営責任者(CEO)たちはもう、自分たちの報酬を増やしたり、高価なカーテンを買ったり、自家用 ジェット機で姿を消したりすることに税金を使うことはできない。そんな時代は終わった。
たしかに、この計画は連邦政府の膨大な予算を必要とする。それは、我々がすでに確保しているよりも、おそらく多い。しかし、行動には大きなコスト がかかるにしても、行動しない場合のコストのほうがずっと大きいことを私は保証する。行動しなければ経済の停滞は数カ月ではなく、数年、おそらく十年に及 ぶことになるからだ。それは、財政赤字や企業活動にとってより悪いことであり、あなたたち、さらに次の世代にとってより悪いことになる。私はそんなことが 起きることを拒否する。
前政権が経営不振の銀行への支援を議会にはかったとき、民主党、共和党とも一様に、経営の失敗とそれに伴う結果に憤慨したことは承知している。米国の納税者たちもそうだった。私もそうだ。
だから、今銀行を助けるように見られることが、どれほど不人気であるかも承知している。特に、彼らの誤った判断によって、少なくとも部分的にはだれもが被害を被っている、この時期に。私は、これに対処すると約束する。
一方、危機にあたって、我々が怒りに基づいて統治したり、その場の勢いに乗った政治に屈したりする余裕もないことも承知している。私の仕事、そして我々 の仕事は、問題を解決することだ。我々の仕事は、責任の感覚を持って統治することだ。私はウォール街の重役たちの利益のために、1セントたりとも支出する つもりはない。ただ、私は、従業員の給与を支払えない小企業や、貯蓄しても住宅ローンを組めない家族を助けるためには、あらゆることをするつもりだ。
これが目指すところなのだ。銀行を助けるのではなく、人々を助けるのだ。借り入れが再びできるようになれば、若い家族が新しい住宅を購入できるよ うになる。こうした住宅を建てる会社が人を雇う。そして雇われた労働者たちが消費に回す金を手にし、もし彼らが借り入れをできるようになれば、おそらく彼 らは車を買ったり、新たな商売を始めたりするようになるだろう。投資家は市場に戻り、退職者たちが再び、安心して暮らせるようになるだろう。ゆっくりと、 しかし確実に、信頼が戻り、我々の経済も回復するだろう。
そして、私は議会に、必要なあらゆる手段を、私と共にとるよう呼びかける。なぜなら、我々は、終わりの見えない不況に、我が国を閉じこめることは できないからだ。そしてこれほどの規模の危機が再び起こらないことを確実にするために、私は議会に時代遅れの規制制度を改革する法律の制定に、ただちに動 くよう求める。強力で、新たな常識にのっとった制度を導入する時であり、それによって、金融市場は意欲と革新を奨励し、不正や乱用を罰することになる。
景気対策と金融安定化の計画は、短期間で経済を回復させるための、差し迫った手段だ。しかし、米国経済を完全に回復させるための唯一の方法は、長 期的な投資によって、新しい雇用、産業をうみだし、他国との競争力をつけることだ。今世紀を新たなアメリカの世紀とする唯一の方法は、石油への依存や高額 の医療費、子供たちのために十分な設備のない学校、引き継がれてきた負債の山といった問題に取り組むことだ。
私は数日後に議会に予算を提出する。こうした文書はこれまで紙に書かれた単なる数字、あるいは計画の細かなリストと見なされることが多かった。私 の見方は違う。米国のためのビジョン、我々の未来への青写真だと考える。私の予算はあらゆる問題を解決したり、あらゆる課題に対応したりすることを目指し たものではない。それは我々が引き継いだ厳しい現実の反映だ。1兆ドルの財政赤字であり、金融危機であり、損害のかさむ景気後退である。
こうした現実からすれば、民主党員であれ、共和党員であれ、この部屋にいるすべての人が、予算がないためにいくつかの価値ある優先課題を犠牲にしなければならない。それは私も同じだ。
だがそれは、長期にわたる挑戦をないがしろにすることを意味しない。私は、政府が我々の繁栄の基礎を築くのに何の役割も果たさないとの見方は受け入れない。
歴史は異なった教訓を教えている。経済の混乱期や転換期に、我が国は常に、大胆な行動と偉大な知恵で乗り切ってきた。南北戦争のさなかにあって、 我々は大陸間鉄道を敷き、商工業を活発化させた。産業革命の混乱期から、我々は新しい世代のために公立の高等学校の制度を確立した。戦争と不況のなかで、 復員軍人援護法によって、大学進学が可能になり、歴史上最も広範な中産階級が形成された。高速道路網が敷設され、米国人が月に降り立ち、技術革新が、いま だ世界を形作っている。
いずれの場合も、政府が私企業に取って代わることはなかった。政府は私企業の触媒となってきた。何千もの起業家や新しい商売が成功するための土台を作った。
我が国は、危機に期待を見いだし、試練のなかに機会を得る国だ。我々は今こそ再び、そうした国家にならなければならない。だからこそ、不要な計画 を削減する一方で、私が提出した予算では、我々の経済の将来に決定的に重要な三つの分野には投資したのだ。それはエネルギー、医療、教育だ。
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