2009年2月15日日曜日

asahi education society university hijokin koshi blues

流しの講師 非常勤ブルース

2009年2月14日3時2分

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写真「悲しみもトホホな気持ちも歌い飛ばそう」と言う佐藤壮広さん=東京都内、磯村写す

 大学など10校を掛け持ちし、年収は200万円ちょっと。東京都内に住む宗教人類学者、佐藤壮広(たけひろ)さん(41)は非常勤講師だ。その悲哀を 「非常勤ブルース」という曲にした。教壇でギターを抱えて熱唱。学生にも自分の心を見つめた歌詞をつくってもらう。異色の授業が好評だ。

 沖縄の民間巫者(ふしゃ)ユタの研究が佐藤さんの専門。教えている私立大のほとんどで、契約は1年ごとの更新だ。「おつかれさまでした」のひと言もなく、メールで「来年度の任用予定はありません」と告げられたこともあった。

 事情を知らない学生がよく尋ねる。研究室は何号館ですか、と。そんなものはない。卑屈になりかけたが、これを歌にしようと開き直った。

 ♪先生いつも どこにいるんですか?/聞かれるたびに おれは答えるよ/おれはいつも お前らの目の前だ

 非常勤ブルース ひとコマなんぼのおれの生活!(※繰り返し)/アルプス1万尺/おれはひとつき3万弱(※)

 大教室では数百人の学生が山場のフレーズを叫ぶ。

 メッセージは「他者の痛みを聞く耳を持て」。ブルースは、アフリカ系米国人の間で生まれた音楽だ。佐藤さんは人々の重い歴史を語り、ブルースを実際に聴かせる。

 世間は高学歴ワーキングプアと呼ぶ。だけど、「パートタイムでも教育者としての誇りをもってやっているぞ、というところを見せたい」。

 授業では学生に、つらさや押し込めた気持ちを見つめさせる。シャウト(叫び)の種さがしだ。作品は、佐藤さんのギターに乗せて発表される。仲間の心情を分かち合うところに意味がある。

 立教大学の08年前期「授業評価アンケート」では、「授業に満足したか」との問いに「大いにそう思う」「そう思う」が計80%。「流しの非常勤講 師」佐藤さんはギター持参の出前講座を開いている。連絡はメール(bluesato2005@yahoo.co.jp)で。(磯村健太郎)



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