2009年2月16日月曜日

asahi art critic film Academy Award special

〈アカデミー賞特集〉ロン・ハワード監督

2009年2月16日

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写真ロン・ハワード監督(C) 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 多作の監督は、絵画「最後の晩餐」に隠された暗号を解きほぐすミステリー「ダ・ヴィンチ・コード」の次作に政治劇を選んだ。

 もともと、実話の映画化に定評がある。「アポロ13」「シンデレラマン」、さかのぼれば、実在の天才数学者を主人公にした「ビューティフル・マインド」はアカデミー賞作品、監督、助演女優、脚色賞を受賞した。

 「フロスト×ニクソン」は、もとは舞台劇だった。舞台版と映画版両方で脚本を担当したピーター・モーガンの視点や力に負うところが大きい。そのモーガン は、このフロスト対ニクソンのインタビューを「決闘」とみた。そして、テレビの力と功罪を主題にすえた。ニクソンはマッカーシー公聴会の演説でテレビを味 方につけたが、ケネディとのテレビ討論で敗北し、ウォーターゲート事件でテレビは完全に敵になる。そのテレビを通して、テレビの寵児フロストと対決する。 クローズアップが発言以上に人格を伝えることを、監督は、この映画でも極端なまでに演出に加えた。

 子役時代からテレビドラマに出演し、今、人気ドラマ「24 TWENTY FOUR」のプロデューサーも務めている。24時間、暮らしをテレビで映される男の戸惑いを描いたコメディー「エドtv」も撮った。テレビをよく知る監督の真骨頂の作品といえる。

 ところで、前作「ダ・ヴィンチ・コード」では、イエスはマグダラのマリアと結婚し、彼女は2人の子を身ごもっていたなど、キリスト教の根幹にふれ る個所があり、これを「侮辱」とみる西欧の宗教団体は、一部で映画の上映禁止やボイコットを表明した。監督は「議論を呼ぶのは楽しみだし、見る側をチャレ ンジさせる、大胆な映画が好きなんだ」と、不評をかったカンヌ映画祭で語ったが、そうした監督らしい挑戦、挑発があったとすれば、それは、テレビが世界を 動かす危うさを突きつけた点だろうか。(アサヒ・コム編集部)

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