2009年2月25日水曜日

asahi shohyo 書評

ソニーは甦(よみがえ)るか [編]日経産業新聞

[掲載]2009年2月22日

  • [評者]勝見明〈ジャーナリスト〉

■モノからの発想抜け出せず

 ソニーの現状について経済記者たちがチームを組み、丹念な取材で全身の隅々にまで"CTスキャン"をかけた本だ。病状が浮かび上がる。

 止血策を講じても出血が止まらないテレビ事業。小型化や記録媒体の技術開発に注力しているうちに、iPodに市場のあり方を ひっくり返され、光を失ったウォークマン。動画投稿サイトの人気が高まるなか、"ビデオカメラのiPod"の襲来が危惧(きぐ)されるハンディカム……。

 問題は何か。象徴的に登場するのは「モノ」という単語だ。デザインや機能など、モノで差異化が図れたアナログ時代の盟主ソニーは、モノからの発想を抜け出せていないと。

 「アトム(物質)からビット(情報)に変わって、ネットワークにとけていく」。路線対立で退いた久多良木健・元副社長の言葉が紹介される。デジタル化したネットワーク時代に、モノではなく、ワクワクする新しいコトを提示できるか。

 紙上での2年に及ぶ連載に大幅加筆した本書は、光を"隅々"の方に探し出す。地域に根ざし、一人ひとりが品質に責任を持つ非接 触ICカード・フェリカの工場。簡易型カーナビを凹凸のあるダッシュボードに吸盤で装着するための素材から発明したチーム。製造や部品などの「裏の競争 力」が健在なうちに「表の競争力」を甦(よみがえ)らせる。いや、ソニーである以上、甦らせなければならないとの記者たちの声が行間に響く。

表紙画像

ソニーは甦るか

出版社:日本経済新聞出版社   価格:¥ 1,680

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