2009年2月25日水曜日

asahi art literature Akutagawa Award Naoki Award

「賞に恥じない活動せねば」津村さん 芥川・直木賞贈呈式

2009年2月25日

  第140回芥川賞・直木賞(日本文学振興会)の贈呈式が20日、東京・丸の内の東京会館で開かれた。芥川賞を受けた「ポトスライムの舟」(「群像」11月 号)の津村記久子さんと、直木賞を受けた『悼む人』(文芸春秋)の天童荒太さん、『利休にたずねよ』(PHP研究所)の山本兼一さんが、それぞれ受賞の喜 びを語った。

 「ポトスライムの舟」は契約社員の女性が主人公。163万円という世界一周の船旅の代金が自分の手取りの年収とほぼ同じと気付き、貯金をしようと思いたつところから物語が始まる。

 芥川賞選考委員の高樹のぶ子さんは「大きな夢を見ることができず、小さな夢をつないでいくしかないという現実をよくあらわしている。怒らず、いじけず、あきらめず、したたかに必死に日々を生きる姿が印象的に描かれていた」と評価した。

 あいさつのために壇上に上がった津村さんは「すごい人……」と、満員の会場に驚いていた。「賞の名に恥じない活動をしていかね ばならないという義務感がわいてきました。(受賞が決まってからのあわただしい時でも)小説を書いている時間だけは、これは自分のすることだという実感が あり、これからも小説を書いていこうと思いました」

 直木賞は今期から選考委員となった宮部みゆきさんが祝辞を述べた。「どきどきしながら初めての選考会に参加しましたが、そこに この2作という旗印がくっきり見えて、頼もしい援軍のようでした。まったく方向性が違うように見える作品ですが、死とどう向き合うか、日本人の21世紀の 死生観を問い直す点で共通している」と話した。

 直木賞の『悼む人』は事件や事故死の現場で死者を悼む放浪の旅を続ける男性の物語。天童さんは重厚な作品のトーンから一転、 ユーモアあふれるあいさつだった。「こういう場所は緊張するので、さきほど裏でワインと風邪薬を飲みました……」と、話題の「もうろう会見」を冗談にし て、笑いを誘った。

 「『悼む人』の主人公の母親は、末期がんでありながら笑いを忘れないようなぞかけを口にします。今回の受賞をなぞかけにすれ ば、直木賞を受賞したとき皆様の口にされる表現に対する、天童荒太のお願いとかけて、万引きで捕まった男の言い訳ととく。その心は、とってない、とってな いよ。これはもらったんです」

 また、『利休にたずねよ』で、千利休の生涯を過去にさかのぼり、原点となった恋を描き出した山本さんは「美の巨人である利休の 茶の本質は、恋の力であると思ってこの小説を書きました。日本に住みながら日本が遠いというのが今の実感です。日本の深層に旅をする気持ちで小説を書き、 日本のいいところをみて、読んだ人が明日のエネルギーになるような小説を書いていきたいと思います」と話した。



0 件のコメント: