宗教社会学者の小池靖さん 世の有象無象、説明してみたい
2009年2月14日
小池靖さん(39)
宗教と、そうとは言えないもの。その境界線上の社会現象を追っている。自己啓発セミナー、「自分を超えた大きな力」を想定する自助グループ、あるいはスピ リチュアル・カウンセラーと名乗る「霊能者」……。「一見わかりにくい人たちを理解し、世の有象無象(うぞうむぞう)を説明してみたいとの思いがあります ね」
キーワードの一つは「セラピー文化」。社会に広がる心理学的・心理療法的な考え方を指す。「人は自分の心をどう説明し、納得するかを考え続けてきました。大きな役割を果たした宗教は後退しつつあり、心理療法的なものが台頭しています」
セラピー文化の主流は「強い自己」を信じる米国発のポジティブ・シンキング(積極思考)系。しかし日本では90年代から、「弱 い自己」を肯定する動きが勢いをつけている。そのままでいいんだよ、という語りが典型的だ。背景には、バブル崩壊後の先行き不安や被害者感情を重んじる傾 向などがあると見る。
「これから格差が広がれば、弱い自己像がより説得力を持つかもしれません」。こうした研究成果を『セラピー文化の社会学』(勁草書房)と『テレビ霊能者を斬(き)る』(ソフトバンク新書)にまとめた。
大学・大学院時代からの関心は、マルチ商法と批判されることもあるネットワークビジネス。伝道集会のような雰囲気や「うまくいかなくても前向きに」といった心構えがひっかかった。
次のテーマは「なぜ女性はスピリチュアルに、男性はナショナリズムにひかれるのか」。これも現代人の宗教意識にかかわる問題だ。(磯村健太郎)
- テレビ霊能者を斬る メディアとスピリチュアルの蜜月 (ソフトバンク新書)
著者:小池 靖
出版社:ソフトバンククリエイティブ 価格:¥ 735
この商品を購入する|ヘルプ
- セラピー文化の社会学 ネットワークビジネス自己啓発トラウマ
著者:小池 靖
出版社:勁草書房 価格:¥ 2,310
0 件のコメント:
コメントを投稿