2009年2月15日日曜日

asahi shohyo 書評

宗教社会学者の小池靖さん 世の有象無象、説明してみたい

2009年2月14日

写真小池靖さん(39)

  宗教と、そうとは言えないもの。その境界線上の社会現象を追っている。自己啓発セミナー、「自分を超えた大きな力」を想定する自助グループ、あるいはスピ リチュアル・カウンセラーと名乗る「霊能者」……。「一見わかりにくい人たちを理解し、世の有象無象(うぞうむぞう)を説明してみたいとの思いがあります ね」

 キーワードの一つは「セラピー文化」。社会に広がる心理学的・心理療法的な考え方を指す。「人は自分の心をどう説明し、納得するかを考え続けてきました。大きな役割を果たした宗教は後退しつつあり、心理療法的なものが台頭しています」

 セラピー文化の主流は「強い自己」を信じる米国発のポジティブ・シンキング(積極思考)系。しかし日本では90年代から、「弱 い自己」を肯定する動きが勢いをつけている。そのままでいいんだよ、という語りが典型的だ。背景には、バブル崩壊後の先行き不安や被害者感情を重んじる傾 向などがあると見る。

 「これから格差が広がれば、弱い自己像がより説得力を持つかもしれません」。こうした研究成果を『セラピー文化の社会学』(勁草書房)と『テレビ霊能者を斬(き)る』(ソフトバンク新書)にまとめた。

 大学・大学院時代からの関心は、マルチ商法と批判されることもあるネットワークビジネス。伝道集会のような雰囲気や「うまくいかなくても前向きに」といった心構えがひっかかった。

 次のテーマは「なぜ女性はスピリチュアルに、男性はナショナリズムにひかれるのか」。これも現代人の宗教意識にかかわる問題だ。(磯村健太郎)

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