2009年2月25日水曜日

asahi international government USA president Obama Remarks 2 in Japanese

オバマ米大統領の施政方針演説全文(2)

2009年2月25日17時0分

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 まずエネルギーから始まる。

 我々は、クリーンで再生可能なエネルギーを利用する国が21世紀をリードすることを知っている。だが、経済のエネルギー効率を高めるために史上最大の努 力を始めたのは中国だ。我々は太陽発電技術を発明したが、生産ではドイツや日本に遅れている。米国の組み立てラインでは、新型ハイブリッドカーが生産され ているが、韓国製の電池で走ることになる。

 私は明日の雇用と産業が国外に根ざすような未来は受け入れることができない。あなた方も同じだろう。米国が再びリードする時が来たのだ。

 我々の再生計画によって、向こう3年間の再生可能エネルギー供給を倍増させる。また、基礎研究の資金に、米国史上最大の投資を行う。エネルギー分野での新発見だけでなく、薬品、科学、技術分野での飛躍的な進歩を促す。

 我々はまもなく、新エネルギーを全国の都市や町に届けることができる、数千マイルに及ぶ電線を敷設する。家やビルのエネルギー効率を改善し、エネルギーへの支出を何十億ドルも節約できるよう、国民に努力してもらう。

 しかし経済の真の改革を行い、気候変動の影響から我々の安全や地球を守るため、究極的には、クリーンかつ再生可能なエネルギーから利益が生まれるようにする必要がある。

 そのため、市場原理で炭素による汚染に歯止めをかけ、米国で再生可能エネルギーの生産を増やす法律を成立させることを、連邦議会に求める。

 これらの変革を支持するため、風力や太陽発電、先進バイオ燃料、クリーンコール(きれいな石炭)、米国製のより燃料効率の高い車といった技術の開発に対して年間150億ドルを投資する。

 自動車産業に関しては、何年にもわたる経営判断の誤りと世界不況によって、我々の自動車メーカーが破綻(はたん)の瀬戸際に追いやられたことは誰しもが認めるところだ。

 我々は、彼ら自身の間違った行いから彼らを保護するべきではないし、そうしない。しかし我々は、設備を一新し、想像力を変革することで、競争して 勝つことができる自動車産業をつくるという目標を約束した。数百万の雇用、数十もの地域社会が自動車産業に依存している。私は、自動車を発明した我々の国 が自動車を捨て去ることはできないと信じる。

 これらのいずれもコストなしで実現できないし、容易でもない。しかし、ここは米国だ。我々は安易な道をとらない。この国を前に進めるために必要なことをするのだ。

 同じ理由で、我々は医療制度における高負担に対処しなければならない。

 この負担はいまや、米国で30秒ごとに発生している破産の原因となっている。今年末までに150万人の米国人が家を失う原因となるかもしれない。

 医療保険料は過去8年間で、賃金の伸びの4倍の速さで上昇した。この間、年間百万人以上の米国人が医療保険を失った。これは小さな事業所が廃業し、企業が海外へ雇用を移す主因となっている。また、我々の予算の中で、最大かつ最も急速に増大している部分の一つだ。

 こうした事実を前に、我々はもはや医療制度改革を棚上げにしている余裕はない。

 すでに我々はこの30日間に、医療制度改革を進めるために過去10年間で行われたよりも多くの努力を行った。

 新議会発足直後に、両親がフルタイムで働いている子どもたち1100万人に、医療保険を提供しまた保証する法案を通過させた。我々の再生計画は、診療記録の電子化や、ミスを減らし、コストを削減し、プライバシーを確保し、そして生命を救うような新技術に投資する。

 また、我々の時代にがんの治療法を探し、ほぼすべての米国人の生活に関連する、この病気を征服するための新たな努力を始める。さらに、予防的医療に過去最大の投資を行う。それが人々の健康を保ち、医療コストをコントロールする最良の方法の一つだからだ。

 この公約の一部は、長年の懸案だった制度の効率化によって、実現できる。そして、我々が将来の赤字を軽減したいと願うならば、進まなければならない一歩だ。

 どのように改革を達成するかについては異なる考えや案が多々あるだろう。だから私は来週からこの課題について取り組むために、企業と労働者、医師と医療機関、民主党員と共和党員を呼び集めている。

 私は簡単にいくという幻想は抱いていない。困難だろう。だが、セオドア・ルーズベルト大統領が改革を初めて唱えてから1世紀近くたつのに、医療費はすで に長い間、我が国の経済と良心にとって負担になっている。はっきりしよう。医療改革はもう待てない、待ってはならない、あと1年も待てない。

 3番目に取り組まなければならない課題は、米国における教育の保証を拡大する緊急の必要性だ。

 自分の持つ知識が一番の価値ある売り物となる世界規模の経済において、良い教育はもはや単なる機会への道筋ではなく、前提条件だ。

 現状では、急伸している職種の4分の3は高卒以上の学歴を必要としている。だが、実際は半数余りの国民しかその学歴に達していない。我が国は先進国の中で高校中退率が最多の部類に入る。そして、大学入学者の半数が卒業できていない。

 これは景気後退への処方箋(せん)でもある。現在、教育で我々を上回る国々は将来は競争力で上回るであろうからだ。この政権が、すべての子どもたちに生まれた日から仕事を始める日まで、完全で競争力のある教育を保証するのを目標としているのはこのためだ。

 我々は景気対策を通じて、すでに教育に歴史的な投資をしている。初期教育を劇的に拡充し、その質をさらに高め続けようとしている。最も学習能力が 高いのは人生の初めの時期だと分かっているからだ。さらに700万人近くが大学の学費に手が届くようにした。予算削減や教師の解雇で子どもたちの進歩に影 響が出ないように必要な財源を提供した。

 だが、我々は米国の学校が財源だけを必要としているわけではないことも分かっている。さらなる改革が必要だ。予算に教師の業績を高めるための新た なインセンティブ、つまりは昇進への道筋や成功報酬を加えたのはこのためだ。学校が高い水準を達成し、学力差を縮めるための革新的なプログラムにさらに投 資する。チャーター・スクールへの関与も拡充する。

 このシステムを機能させるのは政治家や教育者である我々の責任だ。だが、参加するのはすべての市民の責任だ。私は今夜、全国民が少なくとも1年以 上の高等教育か職業訓練を受ける約束をするよう求めたい。コミュニティーカレッジかも知れないし、四年制学校、職業訓練あるいは見習いのような形かも知れ ない。どんな形の訓練だとしても、すべての国民は高卒以上の学歴が必要だ。高校中退はもはや選択肢にはない。それはあなた自身があきらめるというだけでな く、国を見捨てることだ。我が国はすべての国民の能力を必要とし、重要視しているからだ。だから、我々はあなたたちが大学を卒業し、20年までに米国の大 学卒業者の割合が再び世界で最高となるという新しい目標を達成するために、必要な支援を行う。

 授業料が過去にないほど高いことも知っている。だから、ボランティアをしたり、地域に貢献したり、軍務につく意欲があるなら、高等教育の費用をま かなえるよう保証しよう。この世代と未来の世代の新たな国への奉仕の精神を促進するために、私は議会に対して両党合同で法案を提出することを求めている。 その法案はハッチ上院議員と、国のために何ができるかを常に考えていた米国人、ケネディ上院議員の名前が掲げられている。

 こうした教育政策は子どもたちに機会の扉を開くだろう。だが、彼らがその扉を通ることを確保するのは我々の責任だ。結局のところ、子どもにとっ て、PTAの会合に出たり、夕食後に宿題をみたり、テレビを消したり、ビデオゲームを遠ざけたり、本を読んであげたりする父親や母親に取って代わる政策や プログラムはないということだ。

 私は大統領としてだけではなく、1人の父親として、子どもの教育の責任は家庭から始まらなければならないと言いたい。

 もちろん、他にも我々が子どもたちのために果たさねばならない責任がある。それは彼らが支払えないほどの債務を残さないことを確保する責任だ。我 々が受け継いだ債務、直面する危機のコスト、そして我々が取り組まなければならない長期的課題を考えれば、経済を回復させ、債務削減にできることをすべて するよう確保することが、これほど重要だったことはない。

 私は、再生計画が支出内容の限定をつけずに通ったことを誇りに思う。そして、我々にとって最も重要な国家的優先案件だけに間違いなく支出が行われるような来年度予算を通したい。

 私は昨日、財政規律サミットを開き、最初の任期を終えるまでに財政赤字を半減させることを約束した。無駄で非効率な歳出を排除するため、我が政権 では連邦予算の中身について一つ一つ点検してきた。想像できると思うが、これはいくぶん時間がかかるだろう。しかし、我々は大きな項目から取り組み始め た。すでに今後10年間にわたり2兆ドル(約192兆円)の節約項目を見いだした。

 この予算で我々は、機能しない教育プログラムや、支援を必要としない大規模農業ビジネスへの直接支出をやめる。我々はイラクで数十億ドルを無駄にしてき た随意契約を排除し、使ってもいない冷戦時代の武器システムに対する出費をしないように防衛予算を見直す。高齢者の健康向上に役立たない高齢者医療保険制 度での浪費、詐欺、悪用を根絶するとともに、雇用を海外に移している企業への減税をやめ、税体系に公正さとバランスの感覚を取り戻す。

 子どもたちを将来の債務から救うため、我々は米国の2%を占める最富裕層への減税を終わりにする。減税をやめるということは、米国民への大規模な 増税を意味する、という聞き飽きた議論が出てくるだろうから、明確にしておきたい。年間収入が25万ドル(約2400万円)未満の世帯は、10セントすら 税金が増えない。10セントすらだ。実際には、この景気回復計画によって米国の95%の勤労世帯が減税を受ける。そして、払い戻しの手続きが行われている ところだ。

 長期的な財政の健全性を維持するため、我々は増え続ける高齢者医療制度と年金にも目を向けねばならない。包括的な医療制度改革は高齢者医療制度を 将来にわたって強化する最良の方策だ。さらに我々は、全国民のための非課税貯蓄制度を新設するとともに、年金についても同様の改革をどのように行うかにつ いての議論を始めなければならない。

 最後に、我々は信頼の低下という問題にも直面している。予算において誠実さと説明責任の感覚を再建することを約束する。このために、この予算は 10年先を見据え、従来のルールでは触れられなかった支出についても説明をする。そして初めて、イラクやアフガニスタンでの戦闘にかかったすべての費用を 含む。7年間にわたって、我々は戦争を行ってきた。もはや我々はその代価を隠すことはできない。

 私は今、二つの戦争に関する我々の政策を慎重に見直している。イラクをイラクの人々にゆだね、この戦いを責任ある形で終わらせる道について近く発 表する。アルカイダを負かし過激主義と闘うため、我々は友邦や同盟国と共に、アフガニスタンとパキスタンについての新たな包括的戦略を策定する。テロリス トに、地球の反対側の安全地帯から米国人に対する陰謀を図ることを許さない。

 今夜、我々がここに集っている時、我々の兵士たちは海外で警戒を行い、そしてさらに多くが海外展開に備えている。彼らひとりひとりに対し、そして 彼らの留守を預かるという静かな負担を負っている家族に対し、米国民は一つのメッセージを送る。我々はあなた方の奉仕に感謝し、あなた方の犠牲によって奮 い立たされ、そして、あなた方は揺るぎない支持を得ている。軍の行き詰まり状態を和らげるため、私の予算では、陸軍と海兵隊の人員を増強する。軍人に対す る我々の神聖な信頼を維持するため、彼らの給与を引き上げ、退役軍人向け医療制度や手当も拡充する。

 過激思想に打ち勝つため、我々は米軍が守ろうとする価値を油断なく支えていかなければならない。なぜなら、米国が示す模範より強力な力は世界にな いからだ。だから私は、グアンタナモの収容所の閉鎖を命じた。そして、拘束されたテロリストを迅速にまた確実に裁くよう求める。我々の価値を実行すること は、我々を弱めることではなく、むしろ、我々をより安全に、より強くするからだ。そのため、私は今夜ここに立ち、米国は拷問を行わないということを、例外 なしに、そしてあいまいさなしに表明するのだ。

 我々は、新たな関与の時代が始まったことを、世界に言葉と行動で示している。というのも、米国一国では今世紀の脅威には対処できず、世界も米国抜 きでは対処できないと我々が分かっているからだ。我々は交渉のテーブルを避けることも、敵や我々を攻撃しうる勢力を無視することもできない。それよりも、 深刻な時代が求める自信と率直さの感覚を持って、前進することを求められている。

 イスラエルと近隣国との間の確実で永続的な和平を前進させるために、我々の努力を継続するための特使を任命した。テロや核拡散、広域感染症、サイ バーテロから貧困撲滅に至る21世紀の課題に対処するため、我々は古くからの同盟関係を強化し、新たな関係をつくり、我が国力のすべての要素を活用する。

 地球規模の経済危機に対応するため、G20諸国と協力して我々の金融システムへの信頼を回復し、保護主義の台頭の可能性を回避し、世界中の市場で米国製 品への需要が高まるように促す。強い経済を持つために世界は我が国に依存しており、同様に我が国の経済も世界経済の強さに依拠している。

 この歴史の転換点で、世界各国の人々の視線は再び米国に注がれている。この瞬間に我々が何をするのか注目している。我々が先導するのを待っている。

 今夜、この議場に集まっている我々は、この非常時に統治することを求められている。これは、大変な責務であるが、これまで米国のほとんどの世代に託されたことがない大いなる特権でもある。世界を良くするか悪くするかを形作る能力は、我々の手にあるからだ。

 我々は、つまらないことにとらわれ、冷笑的で懐疑的になり、この真実を見失ってしまいがちだ。

 しかし、私はこれまでの人生で、希望というものは予期せぬところで見つかることを学んだ。ひらめきは権力者や有名人からではなく、普通に暮らす非凡な国民の夢や望みの中から生まれる。

 私は、マイアミの銀行経営者だったレナード・アベスさんについて思う。伝えられるところによれば、彼は6千万ドル(約58億円)のボーナスをも らって辞めたが、それを彼の元で働いた全399人の従業員と、かつて働いた72人に渡した。彼はそれを誰にも言わなかったが、地元紙がその事実をみつけた 際、彼は素っ気なく「彼らのうちの何人かは、私が7歳の頃から知っている。このカネを私だけが得ることは正しいことではないと感じた」と言った。

 カンザス州グリーンズバーグという町は、竜巻によって完全に破壊されたが、住民によって再建中だ。私は、クリーンエネルギーがいかに地域全体の電力をま かなうことができるか、また、それがいかにれんがとがれきの山となっていた場所に雇用と事業をもたらすことができるかの普遍的な事例とみている。再建を手 助けした1人は「ひどい悲劇だった」としながらも、「ここの人々は、その悲劇が信じられないような機会ももたらしたことを知っている」とも語った。

 私は、サウスカロライナ州ディロンで訪問した学校に通う少女のことを思う。その学校は天井から雨漏りがし、壁のペンキははがれ、列車が教室の近く を通るたび1日に6回も授業が中断される。この学校は絶望的だと彼女は言われ続けてきた。その彼女が先日、公立図書館に行き、この議場に座る我々にあてて 手紙を書いた。切手代は校長にお願いした。

 手紙は、我々に助けを求めるとともに「私たちは、サウスカロライナ州だけでなく世界を変えることができるよう、弁護士や医師、あなたたちのような議員、そしていつかは大統領になろうとしている生徒にすぎません。簡単にはあきらめません」とつづられていた。

 我々も簡単にはあきらめない。

 これらの言葉や物語は、我々をここに送り込んだ国民の精神について物語っている。最も難しい時代、最も困難な状況下でも、寛大さ、回復力、礼儀正しさ、忍耐強い決意、そして我々の将来と後世のために責任を取る意思があることを。

 彼らの決心は我々を奮い立たせる。彼らの懸念が我々を動機づける。我々は彼ら、そしてすべての人々に、我々は取り組まなければならない課題に負けないと示さなければならない。

 これらすべての点で我々が合意していないことは分かっているし、将来、道が分かれる時も必ず来るだろう。

 だが、今夜ここに座っているすべての米国人が国を愛し、米国の成功を願っていることも知っている。そのことこそが、これからの数カ月に行われるす べての議論の出発点であり、議論の後で立ち返る点となる。そして、我々がその基礎の上に共通の土台を築くことを国民は期待している。

 我々が一致団結し、我が国を危機の深みから救えば、また、人々を職場に戻し、繁栄のエンジンを再始動させれば、そして、我々が恐れることなく課題 に取り組み、決してあきらめない忍耐強い米国の精神を奮い起こせば、何年か後のある日、我々の子どもたちは彼らの子どもたちに対し、この議場にまさに刻ま れている「思い出す価値のある何か」を、我々があの時代に成し遂げたと語ることができるだろう。ありがとう。皆さんに、そして米国に神のご加護を。



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