〈アカデミー賞特集〉「フロスト×ニクソン」
「フロスト×ニクソン」(C) 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
ウォーターゲート事件で失脚し、自ら辞任した初の米国大統領という汚名にまみれたニクソン。名誉回復を狙う彼と、売名をもくろむ軟派な司会者フロストがインタビューで一騎打ちする実話の映画化だ。
77年、Vサインをしてホワイトハウスをヘリで去るニクソン。世界に生中継されたその映像は4億人が見たといわれる。興奮したフロストは、単独インタ ビューを申し込む。この無謀なオファーは意外にも受け入れられる。ただし、ギャラは60万ドル。身銭を切って、前金を払う。
核心のウォーターゲート事件から切り込むが、ホワイトハウスでの録音の歴史を延々と語られてしまう。ベトナム戦争への責任追及には、もっと早く侵 攻すれば、もっと米兵を救えたと、逆に正当化される。老獪なニクソンを前に、「テレビで謝罪させる」という意気込みはなえかかる。が、3日目、ウォーター ゲート事件でニクソンが嘘をついていた新証拠をスタッフが発見し、形勢逆転。フロストはニクソンの動揺を突いて…。
ニクソンの大統領就任から40年、さらに、この伝説のインタビューからも30年を経た。1世代分の年月を経て、風化しつつある歴史を再度、掘り起 こす意図が感じられる。同じ作品賞候補の「ミルク」の実在の主人公ハーヴェイ・ミルクの半生が、その暗殺から30年たった今、再映画化されたのは偶然では ないだろう。
もとは舞台劇。ダイアナ妃事故死に複雑な感情を抱くエリザベス女王を映した「クィーン」の脚本家が手がけた。ブロードウェー公演ではトニー賞候補 に。映画「フロスト×ニクソン」には、この舞台版と同じ脚本家と両俳優が参加した。今回のアカデミー賞で主演男優賞候補になっているニクソン役のフラン ク・ランジェラは手だれだが、たびたび、泡をくうフロスト役マイケル・シーンの好演も光る。シーンは映画「クィーン」でトニー・ブレア首相を、顔も所作も 本物そっくりに演じて世界を驚かせ、笑わせた。
ニクソンの側近役のケビン・ベーコンは、苦み走ったクレバーな表情がいい。また、インタビューの交渉代理人役のトビー・ジョーンズは、 「infamous」でトルーマン・カポーティを熱演。同じ「冷血」が題材の「カポーティ」に主演したフィリップ・シーモア・ホフマンに劣らぬ演技が評判 を呼んだばかりの芸達者だ。(アサヒ・コム編集部)
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