象じゃなく牛の化石だった 栃木
「化石の宝庫」で知られる栃木県佐野市葛生地区にある市葛生化石館に展示してあった古代象「ナウマンゾウ」の骨化石の一部が、後期更新世(約12万年か ら1万年前)にゾウと同時に生息していたウシ科のバイソン(野牛)の前脚骨化石であることが専門家の調査でわかった。バイソンは、国内では岩手県や瀬戸内 地方などで発見例があるが、関東地方で確認されたのは初めてという。
バイソンの化石は長さ22.3センチ、最大幅11.7センチ。左前脚のひじ上部分と見られる。昨年3月、化石館を訪れた群馬県立自然史博物館(同 県富岡市)の館長で大型哺乳類(ほにゅうるい)の研究で知られる長谷川善和理学博士がナウマンゾウの展示標本8点のうちの一つに象とは違う種類の骨化石が あることに気付いた。
長谷川氏が同博物館所蔵のアメリカバイソン(体長約2.8メートル)の骨格と比較するなどして調べたところ、近似種で一回りも大きい偶蹄目(ぐうていもく)・ウシ科の哺乳類と判定された。同氏は3月、調査報告をまとめ発表するという。
同氏と共に調査した化石館の奥村よほ子学芸員によると、この化石は旧葛生町文化財保護委員長などを務めた故清水辰二郎氏が71年より以前に佐野市 山菅町の砕石所の坑内から発掘したもの。ナウマンゾウの骨片などと一緒に採集され、化石館に所蔵、展示されてきたが当時のデータ類は保存されていないため 細部は不明だという。
化石館では展示内容を改め、「バイソン化石」として先月末から紹介している。奥村さんは「ナウマンゾウによく似ているので、長谷川先生に指摘を受 けるまでわからなかった。典型的な草食性動物であるバイソンの存在は当時の古環境を考える上で重要。常設展示してよく研究したい」と話している。(滑川照 夫)
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