匠の技、スピーカーに 紙すき技術で忠実に音再現
スピーカーの命は、どこまで忠実に音を再現できるかだ。東京都昭島市の幅健一さん(34)は、岐阜県に伝わる美濃和紙の「紙すき」の技を応用し、この難題に一つの答えを出した。新技術を生かした製品が近く世に出る。
スピーカーの表面にある「コーン紙」は、電気信号を音に変える重要な役割を果たしている。皿のような紙に、金属の粒子や繊維などの素材を付着させて振動させる。
和紙の需要が減るなか、紙すきの職人だった幅さんの父秀幸さん(59)は、コーン紙専門の技術者に転身。幅さんも子どもの頃から、その技術を父から教えられてきた。
音をそのまま再現させるためには、くっきりとした音を出すように表面をなるべく硬くする。一方で裏面は、スピーカー内に反響する音を吸収させるため、軟 らかくする必要がある。しかし、硬い表面と、軟らかい裏面を2度にわけてすくと、層と層の間がはがれやすくなる問題がある。
この難問を解決するため、幅さんは試行錯誤の日々を送った。そして、通常とは逆の方向からもすくことで、表、裏二つの層の繊維が絡み合い、固く結びつくすき方を見つけ、この技術で特許を取得した。
しかし、幅さんの父から技術指導を受けた大手メーカーも同じ方法でコーン紙の製造を始めた。このため、特許のライセンス契約をめぐって訴訟にもなったが昨年10月に知財高裁で和解が成立し、発明者が幅さんであることが確認された。
幅さんがこの技術を核に立ち上げたスピーカー製造・販売会社には、かつて爆発的な人気を呼んだCDラジカセ「ドデカホーン」を作った技術者らが集まった。新製品のブランド名は「ヤマタミ」。和紙職人だった幅さんの家に伝わる屋号だ。
幅さんは「紙すきは実はハイテク技術。スピーカー用に進化させたことで、誰が聴いても良い音と感じられるようなスピーカーを広く普及させたい」と話している。(河原田慎一)
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