■悩み、揺れたから努力した
当代一の人気モデルが本を書いた。初の書き下ろし、しかも新書だ。
押切(おしきり)もえと新書。ミスマッチかと思いきや、ご本人は話が舞い込んだ時から前向きだったという。
「実は新書が大好きなんです。移動の新幹線や飛行機に乗る前にさっと買えて、旅先で読んでいるうちにモチベーションが上がるので」
坂東眞理子の『女性の品格』。岡野雅行の『人生は勉強より「世渡り力」だ!』。和田アキ子の『おとなの叱(しか)り方』。気に入った本の書名と著者名がポンポン出てくる。雑誌「AneCan」の看板モデルは、新書ブームを支える読者の一人なのだ。
中学校の教科書で「走れメロス」を読んで以来、太宰治の大ファン。それを知った編集側が用意してくれた書名が「モデル失格」だ。このタイトルに向き合うことで、自分の気持ちをより深く掘り下げられた。
「世間にはモデルはキレイで当たり前というイメージがある。でも私は容姿に恵まれていない。仕事も決して順調ではなかった……」。パソコンに向かうと思いがあふれ出した。
ティーン誌の読者モデルとして活躍したものの、その後はオーディションに落ちまくる。仕事がなかった10代はケーキ工場で日雇 いのアルバイトをした。「CanCam」のレギュラーになった後はコンプレックスに悩まされる。モデルとしては低すぎる身長。「ファニーフェイス」な顔。 遅咲きゆえの年齢の高さ。
「私はモデル失格」と悩み、揺れ、だからこそ続けてきた努力。「ありのままを書きながら、気がついたら泣いていた」と笑う。
本当の自分を書き終えたいま、精神的に楽になった。「職業柄名刺を持ってないんです。でも、30歳を前に大事な"名刺"をつくらせていただいた気がする。感謝しています」