2009年8月9日日曜日

yomiuri shasetsu 20090809

レアメタル確保 「都市鉱山」活用に知恵を絞れ(8月9日付・読売社説)

 携帯電話などの使用済みハイテク製品には「都市鉱山」の異名がある。貴重なレアメタル(希少金属)を大量使用しているのに、ゴミとして捨てられているためだ。

 「都市鉱山」からレアメタルを効率よく回収し、リサイクルする仕組みを築くため、官民挙げて知恵を絞る必要がある。

 経済産業省が「レアメタル確保戦略」を策定した。

 日本は多くのレアメタルを中国からの輸入に頼っている。中国が輸出規制を強化している上に、今後も需要が拡大するのは確実だとして、安定確保に向けた方策を洗い出した。

 重点施策に据えたのは、使用済みハイテク製品から回収し、リサイクルすることだ。

 携帯電話は、振動モーターにレアアース、コンデンサーにパラジウム、電池にリチウムなどを使用する。しかも、重量あたりの含有量を鉱石と比較すると、レアアースは約5倍、パラジウムは約100倍にもなる。

 課題は多い。回収した製品から必要なレアメタルを抽出するには専用の設備投資が必要で、経済コストに見合うリサイクル・システムはまだ確立されていない。

 携帯電話は金も多く含むため、リサイクル・コストの安い海外へ輸出されて、金は回収されるものの、レアメタルは未回収のまま廃棄されるケースも多い。

 国内の取り組みが遅れれば、使用済み製品という「貴重な国産資源」は海外に流出する一方だ。産学官が連携し、レアメタルを選択的に分離・分解する技術の開発を急ぎ、経済、技術両面から実施可能な仕組みを整えるべきだ。

 メールや住所録などの個人情報が流出することを嫌って、使用済み携帯電話を手元に置いている人も少なくない。こうした懸念を払(ふっ)拭(しょく)する必要がある。

 メーカーの協力も得て、メモリー部分は着脱できるようにするなど、リサイクルを想定した製品設計を考えることが大事だ。

 回収に応じたら上乗せ分を返金するなど、デポジット(上乗せ価格)方式で回収にインセンティブを与える仕組みも一案だろう。

 政府は、秋田など3県で、スーパーや公共施設に回収ボックスを設置するなど使用済み小型家電回収モデル事業を実施している。

 レアメタルの重要性を周知徹底する上でも、地域に密着した自治体の協力が欠かせない。こうした取り組みを強化し、効果的な回収方法を探ってもらいたい。

(2009年8月9日01時19分  読売新聞)


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