旧日本亭:九州の"花街の象徴"取り壊しへ 熊本
明治から昭和にかけて、九州最大規模の花街として栄えた熊本市二本木で、唯一残る遊郭跡「旧日本亭」の取り壊しが、9月1日から始まる。浄瑠璃や 長唄などの伝統芸能を育てた遊郭文化の名残を今に伝える建物の解体に、地元の人々や民俗学の専門家から惜しむ声も上がっている。
旧日本亭は、米相場で財を成した地元の相場師が1896(明治29)年に建てた。1階は宴会場や遊女が客を迎える部屋。2階は4〜10畳の個室が 長屋のように並び、花やあでやかなしま模様を凹凸で表現した明治時代の型板ガラスなども現存する。戦後の遊郭廃業後は、アパートなどとして利用されてい た。
昨年8月、老朽化が激しい旧日本亭を保存しようと有志が集まり、地元財界などに協力を呼び掛けたが、不況で十分な資金を集めるめどが立たなかっ た。また、明治期の建物を移築・保存する「博物館明治村」(愛知県犬山市)にも声を掛けたが「遊郭の性格上、小中学生の見学者に説明がしにくい」と断られ たという。
所有者の竹本健治さん(66)は「レトロな居酒屋に改装する計画もあったが、建築基準法の防火対策が必要で断念した。これも時代の流れ」と話す。
かつて「紅燈の街」と呼ばれた二本木を象徴する建物が姿を消すことについて、熊本大の鈴木寛之准教授(民俗学)は「二本木は、芸妓たちが伝承して きた浄瑠璃や長唄、三味線など、芸能の拠点の一つ。旧日本亭は地域の芸能史を考えるうえでも重要だった」と惜しんでいる。【門田陽介】
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