2009年8月12日水曜日

mainichi shasetsu 20090812

社説:静岡の地震 自然恐れ日々の備えを

 もしかすると東海地震に関係があるのではないか。駿河湾を震源とする早朝の強い地震に、不安を感じた人は多かっただろう。実際、今回の震源は想定 される東海地震の震源域付近だった。地震のメカニズムは異なるが、これが東海地震の引き金となる懸念があった。気象庁は臨時の会議を開いて検討し、初の 「東海地震観測情報」を公表した。

 最終的には「東海地震につながる変化はない」と判断されたが、日本の周辺では、複数のプレートが境界を接している。いたるところにひずみがたまっており、いつ、どこで、大地震が起きてもおかしくない。

 メカニズムも、想定される東海地震のように、プレート境界にたまったひずみが一気に解放されるものばかりではない。阪神大震災のように内陸の活断 層がずれて起きるものも、今回のようにプレート内部で起きるものもある。こうした地震を正確に直前予知することは、今の科学技術では不可能だ。

 東海地震は特別扱いされてきたが、いつ、どれぐらいの規模で起きるかわからない点では、他の地震と同じだ。非常に運がよければ、プレート境界のす べり現象が前兆としてとらえられるかもしれない、という程度に過ぎない。だからこそ、大事なのは、被害を最小限に抑えるための日ごろからの備えだ。

 今回の地震では、東名高速道路の路肩ののり面が40メートルにわたり崩落し、路面が約20メートルにわたって隆起したところもある。高速道路は ETC(自動料金収受システム)搭載車の料金割引が平日にも拡大され、選挙戦では無料化が争点の一つになるなど利便性や経済効果が注目されるが、足元の安 全は大丈夫だろうか。

 早朝だったこともあり学校での被害はなかったが、文部科学省によると、全国の公立小中学校の約7300棟が震度6強で倒壊する危険性が高いのに耐震補強されていないという。国は09年度補正予算に1830億円を計上し自治体に耐震化を促しているが、早急に実施すべきだ。

 浜岡原子力発電所は運転中だった4、5号機が自動停止した。放射能漏れや火災はないという。同原発では6号機を新設する計画があるが、東海地震に は不確定要素があり、今回のように集中豪雨との複合災害に見舞われることもあり得る。これを機に安全性について再検討をする必要があるのではないか。

 多数のけが人を出したものの、静岡県の都市部・住宅地を震度6弱の地震が襲ったわりに被害が少なかったのは、揺れの特徴に加え、東海地震への備えを進めてきた防災先進県だったからとの指摘もある。備えだけは怠らないようにしたい。


毎日新聞 2009年8月12日 0時18分




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