消費税引き上げ 必要性を率直に国民に説け(8月9日付・読売社説)
社会保障制度を持続可能にする財源をどう確保するか、もう答えを出す時ではないか。
安定財源となり得るのは、広く薄く負担を求める消費税しかないことは多くの国民が理解している。
だが、衆院選に向けた与野党の消費税議論は一向に深まっていない。景気回復や歳出削減の徹底が先だとしても、与野党は選挙戦を通じて、将来の引き上げの具体像を示すよう努めるべきだ。
自民党は消費税を含む税制抜本改革について、「2011年度までに必要な法制上の措置を講じ、経済状況の好転後、遅滞なく実施する」と政権公約に明記した。
増収分の全額を社会保障財源に充てる目的税化を行い、税率を段階的に引き上げる。その準備を終える期限を約束したのは、責任ある姿勢といえるだろう。
与党は05年の前回衆院選で、07年度をメドに消費税などの抜本改革を実現すると公約したが、果たせなかった。今回は真剣に取り組むというなら、税率や引き上げ時期をはっきりさせるべきだ。
民主党は、今後4年間は消費税率は引き上げないという。前回衆院選では年金目的消費税として、3%の引き上げを掲げていた。なぜ今回は引き上げを不要としたのか、十分な説明はない。
昨年暮れの「税制抜本改革アクションプログラム」では、「消費税の重要性はますます高まる」とし、民主党政権の最初の任期中に消費税を含む税制改革の制度設計を進めることを明記した。
社会保障財源として消費税を活用し、その制度設計を始めるなら、与党が示した道筋と大差はない。ならば、国民に負担増の必要性を率直に説くべきではないか。
スウェーデンの25%を筆頭に、イギリス、ドイツ、フランスなど欧州の付加価値税の税率は、15〜20%が当たり前だ。中国は17%、韓国でも10%だ。日本の5%は、むしろ例外的といえる。
引き上げで負担が増える低所得者に対する配慮は必要だ。増収分を社会保障に回すことで低所得者への給付は手厚くなるが、同時に生活必需品への軽減税率の適用も課題になる。インボイス(伝票)方式の検討も避けて通れまい。
民主党は生活必需品の消費税相当額を低所得者に還元する「給付つき消費税額控除」を提唱しているが、実現には所得把握の方法など難題を抱えている。まず軽減税率を考えた方が現実的だ。
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