2009年8月29日土曜日

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広がらぬ次世代アドレス 現行v4、2年後にも在庫切れ

2009年8月28日23時56分

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写真:インターネット展示会「インターロップ」でも、IPv4の枯渇とv6への対応を呼びかけた=6月、千葉市の幕張メッセインターネット展示会「インターロップ」でも、IPv4の枯渇とv6への対応を呼びかけた=6月、千葉市の幕張メッセ

 インターネットの次世代アドレス「IPv6」の普及が進まない。導入コストなどのハードルに、景気低迷が追い打ちをかける。世界的なネットの拡大で、現行の「v4」アドレスは早ければ2年後にも「在庫切れ」になると言われる。政府も普及促進策の検討を始めた。

 ネット検索大手のグーグルは、電子メールや地図を含む主要サービスをすべてIPv6に対応させ、今年1月に公開した。

 「v4でもv6でも、同じレベルのサービスを提供していく。対応が遅れるとかえってコストもかかる」と、日本法人の及川卓也・シニアプロダクトマネージャーは言う。

 とはいえ、同社のような取り組みはまだごく一部にとどまっている。

 ネットには「住所」にあたる「asahi.com」といったドメイン名と、それに対応する「電話番号」といえるIPアドレスがある。いまのv4アドレス の数は全部で約43億個。これに対し、v6は約340澗(かん)(1兆×1兆×1兆)個とほぼ無尽蔵で、安全性も向上させた次世代規格だ。

 IPv6が話題になったのはIT革命ブームの2000年。当時の森喜朗首相が所信表明で取り上げ、翌年の「e—Japan戦略」で「v6移行推進」をうたった。応用技術の実証実験など、これまでの関連予算も計約146億円にのぼる。

 ところが、普及ははかばかしくない。今年3月のネット接続事業者への調査(110社回答)では、v6対応サービス提供済みと予定を合わせて27社。83社は提供予定もなかった。

 そもそもv4とv6には互換性がなく、そのままでは通信ができない。両方が混在したインターネットでは、相互に通信するためにデータ変換が必要だ。

 通信機器の交換やシステムの変更、動作確認など、対応には金と人手もかかる。景気低迷に加え、現時点では顧客の需要があるわけでもなく、「コストを料金に転嫁もできない」と総務省の長塩義樹・データ通信課長は言う。

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 マイクロソフトの「ウィンドウズ」やアップルの「マックOS」の最新版など、国際展開するパソコン基本ソフト(OS)はv6に対応済みだ。通信機器も対応機種が出てきている。

 国際団体のインターネット協会(ISOC)理事を務める江崎浩・東京大大学院教授は「世界的にもv6が必要という点では一致している」。特に急成長を続ける中国や、通信インフラの整備がこれからというアフリカ諸国などの関心が高いという。

 その最も大きな理由としてあげられているのが、いまのv4アドレスの「在庫切れ」問題だ。現在、アドレスの国際管理機関が新たに配布できるv4の「在庫」は5億個足らず。年間2億個前後が配布されており、早ければ2011年ごろには底をつくと言われている。

 v4アドレスの延命策もある。一つの外線番号を複数の内線で共有するのに似た「NAT」という技術だ。

 この技術を事業者レベルで大規模に使えば、限られたv4アドレスを有効活用できる。この技術で「在庫切れ」後もv4をかなりの期間、使い続けることができるのでは、との見方もある。

 ただ、「外線」から「内線」への通信は難しく、「外線」の共有数にも限界がある。特に、動画や音楽配信などの多機能なウェブサービスは、それだけで何回線分も占有する。共有数が多くなりすぎると、ページが表示されにくくなることもあるという。

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 「ネットが突然止まるわけではない。だが、徐々に、真綿で絞めるように影響は出るだろう」

 江崎教授は「v4在庫切れ」問題を、こう説明する。

 総務省と業界団体は昨年9月、「v4在庫切れ」への具体的な取り組みが必要だとして対策チームを立ち上げた。今年2月にはv6対応の促進策を検討する同省研究会も発足。6月下旬には関係事業者への周知や、技術者育成などの支援策を盛り込んだ中間報告書を公表した。

 「v4の枯渇とv6への対応は、経営リスクの問題でもあることを理解して欲しい」と長塩課長。

 江崎教授は「v6ならではというサービスが出てくれば、追い風になる」と技術革新に期待をかける。(編集委員・平和博)




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